ステアリング機構は普段あまり意識しないところかもしれない。ステアリングホイールを回せば前輪が切れる、と当たり前に思っているかもしれないが、ここもいろいろな工夫が凝らされているところだ。今回はかつての主役のボールナット式と現在の主役のラック&ピニオン式を解説する。

ステアリング機構はかつてはボールナット式を多く用いられた

現在の乗用車のステアリング機構はほとんどラック&ピニオン式を採用している。ただ、1980年代以前はボールナット式という機構が主流で、ラック&ピニオン式は一部のスポーツカーなどにしか採用されていなかった。

ということでボールナット式から解説していこう。ちなみに乗用車では採用されなくなったが、トラックなどでは現在も使用されている。動きの流れとしては、ステアリングホイールを回すと、それがウオームシャフトという部品に伝わり同軸上で回転する。

画像1: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの実用知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)より転載。

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの実用知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)より転載。

ウオームシャフトには、ギアがらせん状に切られていて、回転することによってボールナットという部品が動く。さらにこのボールナットがステアリングのリンク機構とつながったセクターを動かすことで転舵ができる。

この機構のポイントはこれだけではなく、ウオームシャフトとボールナットの間にボールベアリングが入っていることにもある。これによってボールナットがスムーズに移動することができ、比較的軽い力でステアリングホイールを回せるというわけだ。

結果的に、ギアボックス内部の部品間や、複雑なリンク機構があるために「あそび」ができ、タイヤからの入力を緩和してステアリングホイールに伝えるのがメリットだ。

画像2: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの実用知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)より転載。

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの実用知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)より転載。

その後、パワーステアリングの普及とともに増えていったのがラック&ピニオン式だ。この機構はシンプルで、ステアリングシャフトとともに回転するピニオンギヤとそれに噛み合うラックギヤによって成り立っていると言っていい。

ステアリングホイールを回すと、ピニオンギアが回転する。するとそれに噛み合うラックギアが動き、ラックギアの両端になるタイロッドを動かすというのが基本的な動きとなっている。タイロッドエンドは、ナックルアームとジョイントでつながっているので、その動きによってタイヤが切れるわけだ。

部品点数が少ないために遊びが少なくダイレクトに動く反面、操舵力が重くなったりキックバックが大きいなどのデメリットが一般に普及しなかった理由だ。ただ、ギア比を適切に調節したり、パワーステアリングが普及することによって主流となっていった。かつては油圧式のパワーステアリングと組み合わせることが多くなったが、現在では電動パワーステアリングとの組み合わせが多くなっている。(文:FAN BOOK編集部 飯嶋洋治)

画像: 現行マツダロードスターはデュアルピニオン式の電動パワーステアリングを採用している。ラックを直接動かすピニオンギヤとモーターがアシストするピニオンギヤを分けて自然なフィールとした。

現行マツダロードスターはデュアルピニオン式の電動パワーステアリングを採用している。ラックを直接動かすピニオンギヤとモーターがアシストするピニオンギヤを分けて自然なフィールとした。

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