一見奇抜なデザインだったり、そこまでしなくてもと思うほどの走行性能だったり、使い切れないほど多機能だったり・・・こうした強い個性を持つクルマはこれまで数え切れないほど登場し、数年で消えていくこともあった。ここでは数ある星の中から1990年代〜2000年代に登場した「個性が強すぎる」国産車にスポットライトを当てて解説していこう。今回は、2003年1月に発売されたスズキの軽自動車「ツイン」だ。

スズキ ツイン(2003〜2005年)

2003年1月に登場したツインは、その名のとおり2人乗りと割り切った小さな軽自動車だった(2種類のパワーユニットに関しては後述する)。提案は1999年の東京モーターショーに参考出品されたコミューター「Pu-3」にあり、それを具現化した。

ランプ類は前後とも丸目でデザインを統一し、スリット入りの非対称フロントグリルや前後未塗装のバンパーによって、可愛さの中に実用性をアピールしていた。インテリアではスピードをメインとしたシンプルなセンターメーターでコミューターらしさを感じさせていた。

画像: そのサイズから、スマート フォーツーとよく比較された。ボディ同色のホイールカバーも目をひいた。

そのサイズから、スマート フォーツーとよく比較された。ボディ同色のホイールカバーも目をひいた。

この小ささから初代スマート フォーツーを思い起こす人も多いだろう。スマートは1995年秋のフランクフルト モーターショーでデビューし、1998年から市販されている。だからターゲットとしていたことは間違いない。

ツインの外寸は全長2735×全幅1475×全高1450mmで、スマートの2500×1510×1500mmと大差ない。ホイールベースも1800mmに比して1810mmと同レベル。決定的な違いは駆動方式で、スマートがRRであるのに対してツインはFFとしていた点だ。

2人分としては外寸からは想像がつかないほど快適な室内空間を確保していたことは、両者に共通する魅力である。

ツインは当時の5代目アルトのプラットフォームを用い、ホイールベースは一気に560mmも短縮している。この1800mmというホイールベースはFFの操縦安定性を確保するのにギリギリのサイズだった。これ以上短くしてしまうと、高速走行時のハンドリングに破綻をきたすことになったそうだ。

一方で超短いホイールベースのおかげで、最小回転半径は3.6mを実現。ちょっとした裏道でもハンドルを切り返すことなくUターンすることが可能だった。

軽自動車初のハイブリッドモデルを設定。ただし価格がネックだった

画像: リアコンビネーションランプもヘッドランプ同様の丸型。リアウインドーがガラスハッチになっていた。

リアコンビネーションランプもヘッドランプ同様の丸型。リアウインドーがガラスハッチになっていた。

エンジンは44psを発揮するK6A型の直3 DOHCの658ccで、これに5速MTか3速ATを組み合わせていた。と、ここまではふつうのガソリン版。で、驚きはもうひとつ、軽自動車初となるハイブリッド版を用意していたことだ。なんとエンジンとAT(こちらは4速)の間に、最高出力5kWのモーターを挟み込んでいた。

バッテリーはリアのラゲッジスペース下にコンパクトなバイク用の鉛バッテリーを直結して配置。その数は12Vを8個繋げたパックを2セット、つまり16個で192Vとしていた。普通の鉛バッテリーを使っていたのだから、なんとも大胆。10・15モード燃費は、ガソリンの26.0km/Lに対して34.0km/Lと良好だった。

だが、ハイブリッドのネックは車両価格にあった。ガソリン版は5速MTの最廉価版が49万円からだったのに対し、ハイブリッド版は129万円からと大きな差がついていた。いくら3割燃費が良くても、80万円の価格差を埋め合わせるのは至難の技だ。ハイブリッドは当時の、技術的アドバルーンに過ぎなかったと言える。それは16個もの鉛バッテリーを目にすれば明らかなことだった。

スマートのユーザーだった人なら分かると思うが、2.5m強の全長は街中ですごく重宝する。小型車横1台分のスペースに縦2台を駐車する、なんてこともできてしまうのだから。とはいえ、さすがに2人乗りはハードルが高かったようで、2005年秋に累計約1万台をもって販売終了となる。

その3年後にトヨタは2985mmの全長、2000mmのホイールベース内にFFで4人乗車可能な「iQ」をリリース。マジックのような室内レイアウトや1.0 & 1.3Lエンジンで話題となる。だが、これとて成功作とはならなかった。やはり、小さいクルマ作りは難しいのだ。(文:河原良雄)

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