これこそが、まさにベーシックカーの「基本」かもしれない
乗り味はもはや軽自動車だと思えないほどしっかりしており、HEARTECTのプラットフォームや環状骨格構造のボディが効いているようだ。ドアを閉めるときの音や感触は、より大きいクラスのクルマのように感じられる。
短時間だが、高速道路も走ることができた。80〜100km/hでのクルージングなら室内騒音はおさえられており、パッセンジャーと普通に会話できる。追い越し加速で少しエンジン回転数を上げると多少はノイジーになるものの、これは瞬間的なものだしうるさくて不快に思うほどではない。風切り音も抑えられている。
運転をカメラマンに代わってもらってリアシートにも座ってみた。運転席を身長172cmの筆者のドライビングポジションにセットし、その後ろに座っても頭上はコブシひとつ以上、ヒザの前はコブシふたつ半以上のスペースがある。座面は少し高目でアップライトなポジションだが、見晴らしも良く、これなら大人4人でのドライブも可能だろう。ただし、その場合はパワー的には少しツラいかもしれないが。
ひとつ気になったのは、スズキの軽自動車に共通するハンドルにまつわること。小回りはよく効くのだがステアリングギア比がスローで、ロックtoロックが4回転以上あること。車庫入れなどでは、けっこうハンドルをぐるぐる回すことになる。パワーステアリングも付いているのだし、もう少しレシオをクイックにしても良いかと思うのだが、このクルマだけ乗っているのなら気にならないかもしれない。
リアシートバックは分割可倒しないし、ラゲッジスペースも限られているが、軽自動車にそうした部分を求める人は、スライドドア付きのハイトワゴンにすればいい。2人乗車までがほとんどで、タウンユースを中心としてたまに遠出もしてみたい・・・といった使い方なら、新型アルトは最適だろう。室内の広さを別にすれば、もはや乗り味は登録車のコンパクトカーと遜色ないレベルにある。「軽だから・・・」ではなく「軽なのに!」と思わずにはいられなかった。
むしろ、これだけ高剛性なボディがあるなら、もっとパワフルなエンジンを積んだモデルを作っても問題ないだろう。そう、「ワークス」の登場を期待してしまうのは、筆者だけではないようなのだが・・・。(文:Webモーターマガジン編集部 篠原政明/写真:伊藤嘉啓)
■スズキ アルト ハイブリッドX 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1525mm
●ホイールベース:2460mm
●車両重量:710kg
●エンジン:直3 DOHC+モーター
●総排気量:657cc
●最高出力:36kW(49ps)/6500rpm
●最大トルク:58Nm(5.9kgm)/5000rpm
●モーター最高出力:1.9kW(2.6ps)/1500rpm
●モーター最大トルク:40Nm(4.1kgm)/100rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・27L
●WLTCモード燃費:27.7km/L
●タイヤサイズ:155/65R14
●車両価格(税込):125万9500円