格別の絶景広がる、森の中の優美なリゾート
自然感溢れるラウンジへと案内され、ソファに腰をおろした時、広がる光景を目にして年甲斐もなく「ワオっ」とつぶやいてしまった。大きな窓の向こうに、夏を迎えた富士山の美しくも雄大な姿が現れたからだ。聞けば、湖畔から車寄せ、ロビーに至る導線は、その姿が見えないよう造られているという。感動もひとしおなわけだ。
もっとも「ふふ 河口湖」からの眺めは格別だった。左右に山林が回り込み、開けた中央には富士山、その手前には湖面と、構図的にも優れた景観美なのだ。しかも、葛飾北斎が各地の「富士見」の名所から富士山を描いた「富嶽三十六景」の中に「甲州三坂水面」という作品があるが、その絵のような景色なのである。この作品はふふ 河口湖と同じ河口湖北側の山麓にある御坂峠からの眺めと伝わるから、似て当然。だが、現在の御坂峠から望む景色よりも、北斎が伝えたかった景色に近い印象を覚える。
ふふ 河口湖の魅力はその素晴らしいロケーションだけではない。サービスや設備にさりげなく、この地の息吹そして富士山を感じさせるのも魅力だ。たとえばゲストルーム。眺望も優れるが、32室の客室すべてに個室露天風呂が付くという贅沢なつくりで、浴槽の床板には富士山の溶岩石を使用。天然の低張性アルカリ温泉をさらにまろやかにしている。
また、部屋はナチュラルな風合いを大切にしたデザインとインテリアで構成され、屋外にも室内にもなるインルームバルコニーを備えるなど、外と内の境界をなくし、自然や景色と一体化するかのような空間を持っている。
焚火を囲んでのすてきなひと時が待ち受けるアフターディナー
「SPA by Sisley」の「インルームスパ」やロマンティックなひと時が楽しめるバイオエタノールの暖炉がバルコニーに設置されるなど、癒しの創出にも余念がない。スイートには岩盤浴室も備わる。ほかにも革製キーホルダーをつけたルームキーをはじめ、スイッチなどのサインやアイコン、木のボックスで機械的なアイテム類を隠すなど、細部に至るまで自然を意識したこまやかな心配りや遊びが感じられ、宿の名の由来でもあるように、思わず「ふふっ」と笑みがこぼれてしまう温かさに溢れる。
料理は森をテーマとした食材と薪を使用した調理法にこだわっている。富士桜ポークのローストや甲斐サーモンの釜炊きごはんなど、薪を使った薫り高きひと皿が味わえるのだ。なお、ダイニングは高いプライバシー性を保つよう、導線、視線を工夫している。こうしたプライバシーへの配慮やプライベートなサービス対応は「ふふ」ブランドの大きなこだわりであり、特徴でもある。
バーやラウンジも周囲の自然とつながるかのような空間で心地良い。夜ともなればペンダントライトやろうそくに明かりが灯され、ファイヤーピットを備えるテラスやガーデンでは焚火を囲みながらアフターディナーの素敵なひと時が待っている。
富士山は周囲からでも存分に眺めることはできる。しかし、その姿とともに富士山が生み出した美しい自然を上質に贅沢に堪能するとなると、ここに勝る場所はないだろう。(文:小倉 修)