フルモデルチェンジでMHEVシステムが搭載され、全グレードが電動化された新型Cクラス。ガソリンモデルのC200とディーゼルのC220dを連れ出し、2モデルの走りと、その進化をチェックした。(Motor Magazine2022年2月号より)

新世代のデジタル化された操作系とMHEV 化したパワートレーン

ブランド初のモデルであるメルセデス35PSが1900年にデビューし、近代4輪ガソリン自動車の原型を作ったと聞く。

画像: C200(左)は204ps/300Nmを発生する新型1.5L直4ターボ「M254」を、C220dは200ps/440Nmの2L直4クリーンディーゼルターボ「OM654M」を搭載。

C200(左)は204ps/300Nmを発生する新型1.5L直4ターボ「M254」を、C220dは200ps/440Nmの2L直4クリーンディーゼルターボ「OM654M」を搭載。

それから120年あまり続いた近代自動車の歴史は、今、大きな転換期を迎えて各メーカーは足早にBEV化へのシフトを進めている。100年以上続いた自動車の歴史はガソリンエンジンに代表される内燃機関の歴史でもあり、BEVシフトは、まさに100年に一度の大変革に違いない。

そんな中、先日の新聞記事で、メルセデスはこれからの100年の歴史も我々が作っていく、というコメントを発表した。近代4輪自動車を築いてきたメルセデスは、BEV化の時代にも大きな牽引力をもって、着実に突き進んでいくことを宣言したと言える。

そして、全モデルISGにより電動化されたのが新型Cクラスだ。C200はEクラスやSクラスなど、すでにデビューを果たしているモデル同様、眉をひそめたようなキリッとした顔立ちや、横長に伸びるリアビューなどの共通項もある。以前よりもスピード感をイメージさせながらも低重心で落ち着いたフォルムを持ち、クラスを超えた上質さに感心した。

一方室内に乗り込んでみると、外観から受けた手堅さとは大きく異なり、ワイドなコクピットディスプレイに加えて、センターには大型タブレットを連想させる大画面がドンと構える。デイトレーダーがモニターに囲まれているような、パソコン生活がそのまま再現されているようで少し馴染めない印象だ。Z世代にとってはきっとありふれた日常で、これこそが近代自動車のあるべきインパネデザインに違いないだろうが、アナログスイッチがほぼ皆無の状況に昭和世代は戸惑ってしまう。

しかし今回は、その便利さを享受することができた。たとえばナビ使用時には前方のライブ映像に進行方向を重ねて表示したり、死角を捉えることができるなど、自動運転以上にその良さを体感できた。機能を使い込むことができれば、無限の可能性が秘めている気持ちになった。

軽快な乗り味と緻密なハンドリングはやはりメルセデス

乗り味も同様で試乗会ではあまりの軽快さに、メルセデスはドイツ車ではなくなってしまったのか、と疑問に思いながらも、分も走っていれば、その正確で緻密なハンドリングに驚かされた。

画像: 室内を彩るアンビエントライトは64色から選べる。単色のみ、色の連続的な変化も可能。エアコンの設定温度の連動もできる。

室内を彩るアンビエントライトは64色から選べる。単色のみ、色の連続的な変化も可能。エアコンの設定温度の連動もできる。

拳ひとつ分の操作をまるで他人に任せているような操舵力で行ってみても、Gの立ち上がりは従来同様に腰にジワッと伝わり、その後の安定感は常に路面からの入力をやさしく伝達してくれることで、余計な配慮は不要だ。リア操舵によって身のこなしが軽くなりながら、いつものメルセデスらしい足もとの正確な動きで、従来同様の落ち着きを再現。

今回はそんな思いを持ちながらガソリンモデルのC200アバンギャルドと導入間もないディーゼルのC220dアバンギャルドを比較試乗することになった。前車には14.5万円で装着可能なオプションのリアアクスルステアリングが装備されている。両モデルともエンジンとトランスミッション間に組み込まれた48VのマイルドハイブリッドユニットのISGが組み合わされている。

またベルト駆動からダイレクト駆動に代わったことで瞬間的には最大20ps/200Nmのブースト効果の他、スムーズな加速感や再始動、変速ショックの低減やコースティングなど多くの効果が期待できる。

ISGの搭載で滑らかな加速とトルクフルな走りに

今回初試乗したC220dはまさにその恩恵が大きい。エンジン始動の瞬間からディーゼル特有のザラツキ感が薄くなり、扱いやすさとスムーズさを両立。2L 直列4気筒ユニットながら、振動が少なく6気筒に匹敵するような滑らかな加速感と、下から盛り上がってくるトルク感によって上級クラス並みの落ち着いた走りが楽しめる。9速ATもシームレス化され、多段化への少なからずあった疑問や不満も消えた。

画像: 軽快さのC200(前)を選ぶか、落ち着いた走りのC220dを選ぶか。

軽快さのC200(前)を選ぶか、落ち着いた走りのC220dを選ぶか。

1.5LガソリンユニットのC200では吹け上がりの軽さが魅力だ。184ps/280Nmから204ps/300Nmへとパワーアップされたことも大きいが、シフトアップポイントの6000rpmまでの直線的な伸びに加えて、シフトアップ後のつながりが良い。1速からの加速で4000、4500rpmで各ギアにリレーされ、ストンと回転が落ちる切れ味と、次につながる滑らかな加速感が軽快さを演出している。モーターがそのサポートをしているに違いない。

ワイディングロードでの走りは足もとが上下に軽く動くのはともに違いないものの、C200はやや反発感があって跳ね気味。C220dは下腹にズシリと重みがあり、乗り味はやや異なる。いずれも収まりが良いことから、ボディの揺れは感じられない点は見事で、コーナーではC200は軽快さを存分に発揮し、C220dはメルセデスらしい落ち着いた走りをみせてくれる。

もっともC200の軽快さはリアアクスルステアリングの効果が大きい。60㎞/h以下では2.5度まで逆位相し、それ以上では同位相と逆位相を効果的に働かせることで旋回初期は軽量コンパクトな動きを見せても、その後はピタリとラインに収まる。

その点、C220dは旋回後半は同じ安定感を持ちながら、旋回初期はハンドルに手応えを感じながら姿勢を作っていく。足もとの動きは新世代となって軽くて緻密な動きを持ちつつ、両モデルともパワーユニットの味付け同様、従来の重厚さと、新技術満載による軽快さを作りこんでいる。

伝統と革新。この2台に乗るとメルセデスのこれからの100年を突き進もうとするチャレンジ精神と、決して歴史を否定しない盤石さを見た。今までの100年同様、次の100年に向けて確実な舵取りとともに、大きな一歩を踏み出したようである。(文:瀬在仁志/写真:村西一海)

メルセデス・ベンツC200アバンギャルド主要諸元

●全長×全幅×全高:4755×1820×1435mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:1660kg
●エンジン:直4DOHCターボ+ISG
●総排気量:1494cc
●最高出力:150kW(204ps)/5800-6100rpm
●最大トルク:300Nm/1800-4000rpm
●モーター最高出力:15kW
●モーター最大トルク:208Nm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム ・66L
●WLTCモード燃費:14.5km/L
●タイヤサイズ:225/50R17
●車両価格(税込):654万円

メルセデス・ベンツC220dアバンギャルド主要諸元

●全長×全幅×全高:4755×1820×1435mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:1750kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ+ISG
●総排気量:1992cc
●最高出力:147kW(200ps)/3600rpm
●最大トルク:440Nm/1800-2800rpm
●モーター最高出力:15kW
●モーター最大トルク:208Nm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:軽油 ・66L
●WLTCモード燃費:14.5km/L
●タイヤサイズ:225/50R17
●車両価格(税込):682万円

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