11代目に進化した新型シビックはどんなクルマとなったのか。「爽快」をグランドコンセプトに開発されたというが、それはどのように実現されているのか。これまでの考察をふまえ、あらためて試乗を行ってみた。

「シビック=FFスポーツコンパクト」というイメージからの脱却

2021年8月5日発表、9月3日から販売が開始された新型シビックは、ボディは5ドアハッチバックのみ、エンジンもひとまず1.5Lターボのみだ。グレードは「LX」と「EX」の2種類があるが、今回は上級グレードの「EX」を試乗した。

画像: 落ち着いたデザインのインテリア。ハニカムメッシュの内側に空調の吹き出し口を設けることで、インパネのい印象がすっきりした。

落ち着いたデザインのインテリア。ハニカムメッシュの内側に空調の吹き出し口を設けることで、インパネのい印象がすっきりした。

ただし、上級グレードの「EX」といっても、タイヤその他の走行性能にかかわる部分はグレードを問わずすべて共通で、シート生地など装備が異なるだけだ。トランスミッションはどちらのグレードでもパドルシフト付き7速マニュアルモードCVTと6速MTが選べるが、今回は初期受注で全体の4割近くに達したと話題になった6速MT仕様を選択した。先代でもMT比率は3割近くあったというが、4割というのは最近のモデルでは異例だ。

新型シビックに触れてまず感じたのは、ずいぶん大きく上質になっていたということ。シビックはグローバルな人気モデルとして世代を追うごとに進化し、フィットの開発計画に合わせるかのように、8代目でベーシックカーからミドルクラスにすっかり移行した。しかしその8代目の途中で日本市場から一時姿を消してしまった時期があり、しかも注目を集めた8代目タイプRユーロ、9代目タイプRはコンパクトな3ドアハッチバックモデルだったので、どうも「シビック=FFスポーツコンパクト」というかつてのイメージからなかなか抜け出せず、少し戸惑ってしまった。

積極的にマニュアルトランスミッションを選ぶ価値がある

試乗してのファーストインプレッションは、適度なスポーツ性と心地よい日常性がうまく両立されていて、気兼ねなく、いつでも走りが楽しめそうだということ。

画像: 1.5L直噴ターボエンジンは既存ユニットの改良型。最高出力182ps、最大トルク240Nm。小気味いいピックアップ、軽快感が心地よい。

1.5L直噴ターボエンジンは既存ユニットの改良型。最高出力182ps、最大トルク240Nm。小気味いいピックアップ、軽快感が心地よい。

搭載されるエンジンは最新仕様の1.5L直噴ターボユニットで、低回転域から大きなトルクを発生することで高い実用性と燃費性能を発揮しつつ、アクセルペダルを踏み込めば痛快な加速感を味わうことができる。最高出力182ps/最大トルク240Nmを発生するから、車重1340kgのボディにとってパワーにまったく不満はない。

こうしたスポーティな特性のエンジンであれば、6速MTは選びがいのある設定といえるが、そのシフトフィーリングが気持ちいいのでさらに気分が上がる。手首の返しだけで決まるクイックな操作感、すこすこと入る小気味いいゲート感が心地いい。初期受注でMT比率が全体の4割近くに達したのもわかろうというものだ。

走りの気持ち良さは、しっかりとしたシャシとサスペンションによるところも大きい。プラットフォームは先代で新開発されて高く評価されたものの進化型で、やや硬めだがストロークのある足まわりとともに、機敏なハンドリングをもたらしてくれる。全体的にスポーツ寄りの仕立ては、しっかりとした体幹でショックを吸収してくれる感じで、「爽快な走り」を目指したというだけあって、すっきりした乗り味だ。

その心地よさはインテリアの設えからも感じられる。水平基調のダッシュボードやすっきりと広い視界も、運転のし易さにもつながっている。

爽快な走りが物語る「世界が認めた」個性と実力

画像: 新型11代目の日本仕様は5ドアハッチバックのみの設定。そのボディ形状はハッチバックというより5ドアクーペに近い。

新型11代目の日本仕様は5ドアハッチバックのみの設定。そのボディ形状はハッチバックというより5ドアクーペに近い。

シビックは日本市場ではもはやコンパクトカーといえる存在ではなく、全長は4550mmにもおよぶ。また、ハッチバックといってもいわゆる2BOXスタイルではなく、試乗する前は少し戸惑ってしまったが、「高級過ぎず、親しみやすく、カッコ良く、走りが楽しい」という個性は、気がつけば、往年のシビックそのものだ。

世界的な人気モデルなのに、いや世界的な人気モデルであるがゆえに、日本市場で受け入れられにくい状況になっているという「モヤモヤ」を、新型シビックはその爽快さで吹き飛ばすことができるだろうか。(文:Webモーターマガジン編集部 松本雅弘/写真:井上雅行)

ホンダ シビック EX 主要諸元

●全長×全幅×全高:4550×1800×1415mm
●ホイールベース:2735mm
●車両重量:1340kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1496cc
●最高出力:134kW(182ps)/6000rpm
●最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1700−4500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:16.3km/L
●タイヤサイズ:235/40R18
●車両価格(税込):353万9800円

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