日本のモータリゼーションとともに月刊モーターマガジンは発行を重ね、今号で800号を迎えた。その間、約67年。自動車業界は今、100年に1度という大変革期を迎えている。そこで、この特集では日本を代表するメーカーやインポーターのキーマンにインタビューし、近未来の展望やカーボンニュートラルへの取り組みなどを訊くことにした。訊き手:Motor Magazine編集長 千葉知充(Motor Magazine2022年3月号より)

ナビの基本機能を磨き上げつつWi-Fi関連技術を積極導入

荻島 基本はやはり、安心してドライブが楽しめる、つまりしっかり目的地を検索できて、適切なルートを素早く探索して、安心して案内を任せられるというところは変わらないと思います。そのうえで、エンターテインメント機能の充実やスマートフォンを媒介としたWi-Fiの活用などがさらに進んでいくと考えています。
安心してドライブするための機能を満たしたうえで、映像や音楽などを車内でもよりいい環境で、パッセンジャー全員が心地良い空間を共有できるようになります。従来もこうした点を開発の基本に据えてきましたし、この方向性自体は継続していきたいと思います。

MM そこに新技術やコンセプトの投入があるということですね。

荻島 たとえばWi-Fiの活用を拡張させれば、地図の自動更新が可能になります。また、エンターテインメント関係では自宅で録画した映像をレコーダー経由で車内で再生したり、BSやCS放送をそのまま視聴できるようになります。

MM タッチではなく、音声コントロールが主流になる可能性は、いかがですか。

荻島 すでに「F1X10BH」でもWi-Fiを使った音声認識機能を搭載していますが、この分野は5G時代の本格到来とともに加速するのではないでしょうか。将来的にはAIを活用して、カーナビからドライバーに提案する日が来るかもしれません。
しかし課題もあります。車内ユースという特殊な条件がありますので。走行音の中から声だけを抽出する技術も研究しています。そのうえで、何か言うと必ずカーナビゲーションが返答してくれる、仮に誤認識してもそれがドライバーにわかることが重要ですね。誤動作は絶対に避けなければなりません。

画像: フローティング構造を採用。470車種以上に取り付け可能だ。車体の揺れでも画面が揺れない耐振動性能を考慮した設計を採用する。

フローティング構造を採用。470車種以上に取り付け可能だ。車体の揺れでも画面が揺れない耐振動性能を考慮した設計を採用する。

MM 当面はスマートフォンとの連携がカギとなるという印象ですが。

荻島 現状では、スマートフォンは動画や音楽を楽しむための媒体という位置づけが主流ですが、これからは通信の媒体としてサーバーにつなげる手段として使うことを想定しています。今後は地図の自動更新などの機能も、市販カーナビゲーションで実現する方向に進めていきたいですね。
もちろん、基本機能のブラッシュアップは今後も続けていきます。自車位置の精度、地図の表現など、目立ちにくい部分ではありますが、これは我々にとって絶対に外せないポイントです。

MM 最後にカーナビゲーションの近未来像を聞かせてください。

荻島 道案内、エンターテインメント以外の機能、たとえばクルマの不調を知らせるアラートなどがユーザーインターフェースとして盛り込まれる時代が来るかもしれません。とは言え、ドライバーが運転に集中できる環境を実現するのが我々の役割であることに変わりはありません。
そのうえで、時代の要請やお客様のニーズを先取りしたコンセプトで開発した商品を私どもの「ストラーダ」では、毎年、新しい技術やチャレンジは盛り込みたいと考えています。有機ELもそうした試みのひとつです。お客様の要求レベルもどんどん上がっていますし、いただいた要望にはお応えしたいですね。そうして、お客様の期待を上回るWOWな商品を世に出していきたいと思います。(写真:井上雅行、パナソニック)

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