深化するオーディオメーカーと自動車メーカーのパートナーシップ
2022年3月に発表された分析・アドバイザリー会社「Astute Analytica」の調査によれば、いわゆるマルチスピーカーシステムに対応した車載プレミアムオーディオシステムの市場規模は、今後ますます拡大していくと予想されているのだという。
レポートの内容としては、成長の要因として「交通渋滞によるクルマでの移動時間の増加」が挙げられているのが、なかなか興味深いと思えた。
たとえばテキサスA&M交通研究所が発表したレポートを見ると、北米では交通機関の遅れによって、1年間で平均約54時間も余分な時間を過ごしているのだという(2019年8月現在の推計)。そこで、車内エンターテインメントの質が問われるわけだ。
要はよりクオリティの高い渋滞時間を(たとえば音楽を聴いて)楽しむために、より高音質なサウンドを追及する結果として、世界有数の上級オーディオブランドが手掛ける車載用プレミアムオーディオシステムの需要が急速に高まり、市場の成長を後押ししているということ。なかなか説得力のある分析ではないか。
ちなみにその世界市場をタイプ別に分析してみると、とくに12スピーカーが約32%の最大シェアを占めると予測されている。18スピーカーは技術的進歩によって、10.3%という急成長が見込まれるのだそうだ。
成長市場であるということは同時に、激戦区でもある。だからこそオーディオメーカーと自動車メーカーのパートナーシップもまた、非常に濃密だ。
かたや自動車づくり、かたやオーディオづくりに対して「プレミアム」を標榜するブランドだけに、それぞれのこだわりと矜持を背景に開発に臨んでいる。結果的にリスニングルームとしてのマイカーは、そのクオリティをますます高めていくことになるのだろう。
果たして、その開発現場ではどんな丁々発止が繰り広げられているのだろうか。