サーキット直系の技術がふんだんに使われた911GT3の最新モデルがついに登場した。ポルシェが公表したニュルブルクリンク北コースのラップタイムは、先代のGT3を17秒以上も短縮した6分59秒927。このタイムが示しているのは、新型GT3がいかに進化して高性能になったかということだが、その実力は間違いなく、最高だった。(Motor Magazine2022年5月号より)

レース直系のサスペンションとエアロダイナミクスが効果的

初代ポルシェ911GT3がデビューしたのは、車体を一新して初めて水冷エンジンを搭載したタイプ996の時代、1999年のことである。ル・マンで活躍した911GT1直系のエンジンを搭載し、ハードに締め上げたサスペンション、大型エアロパーツなどを採用したこの初代GT3は、911に何より走りの刺激を求めるユーザーへのひとつの回答だったというだけでなく、モータースポーツとダイレクトに結びついた存在でもあった。何しろワンメイクレースの最高峰、ポルシェカレラカップ参戦用のマシンは、ほぼこれに安全装備を追加しただけのスペックだったのだから。

その伝統は2021年に発表された最新のタイプ992にも引き継がれている。このマシンには、まさにサーキット直系と言うべきテクノロジーやアイテムがふんだんに用いられているのである。

筆頭に挙げるべきは、やはりパワートレーンだろう。車体の後端に搭載される4L水平対向6気筒自然吸気エンジンは、先代タイプ991の後期型で初めて使われたもので、実はWECに投入されている911RSR、そして最新のカップカーである911GT3カップ用のユニットと多くの部分を共有している、まさにレーシングエンジンなのだ。

自然吸気、そしてレブリミットは9000rpmからという典型的な高回転高出力型のこのエンジン、新型では最高出力が10ps、最大トルクも10Nm上乗せされて、それぞれ510ps、470Nmmを獲得している。トランスミッションは6速MTと7速DCT(PDK)から選択することができる。

そして新型のトピックと言えるのがシャシである。フロントサスペンションに長年使い続けられてきたストラット式に代わり、ダブルウイッシュボーン式が採用されたのだ。

実はこれも911RSRに初めて使われ、そしてタイプ992の911GT3カップに先行採用されたもので、つまりモータースポーツ直系である。高いキャンバー剛性、横力の影響を受けないダンパーのスムーズな動き、セットアップ範囲の広さなどメリットは大きい。それがいよいよロードカーにも採用されたのである。

ボディワークも、やはりレースで培われた知見やノウハウが全身に活かされている。最新型911RSRとの共通性を感じさせるフロントバンパーの大きな開口部は、ここから大量の空気を取り込み、そしてそれをブレーキとラジエーターに振り分ける。ラジエーターを通過した空気はその後方からフロントリッドに開けられたエアアウトレットを通して放出され、ここでフロントのリフトを低減するべく働くのだ。

一方、リアにはやはり911RSR譲りのスワンネック型、要するにウイング本体を上から吊り下げるかたちのマウントを採用している。こうすることでウイング下面を通る空気の流れがクリーンになり、より多くのダウンフォースを獲得できるのだ。また、バンパー下の大型ディフューザーも、空力的に果たす役割は大きい。

車両重量は1435kgで、先代のGT3に対して5kg増となる。全長が伸ばされ、よりワイドなタイヤを履き、ガソリン微粒子フィルターなど環境性能向上のための各種アイテムも追加されていると考えれば、これは優秀な数値と言えるだろう。

実際、軽量化のためフロントリッドはCFRP製とされ、ブレーキディスク、ホイール、エキゾーストシステムなどは重量をこれまで以上に軽減。バッテリー、そしてなんとウインドウガラスまで軽量タイプとされているのだ。

そんなGT3だけに、インテリアは飾り気がなくスパルタンな雰囲気。メーター表示には走りに関係する項目のみに絞ったレイアウトとなるトラックモードが用意される。PDKのセレクターレバーがカレラ系とは異なる、まるでMTのような形状の専用品になっているのも注目である。

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