日産自動車は2022年4月8日、かねてから2028年の実用化を公言していた次世代バッテリー技術「全固体電池」の開発状況に関する技術セミナーを開催した。小型軽量化や航続距離の延長が期待される夢の蓄電池は、バッテリーEVのさらなる多様性を広げてくれる可能性を秘めている。EV価格の常識まで、もしかすると変えてしまうかもしれない。

2030年までに「ワクワクする」電動車を23車種も市場に投入

2021年の春、日産自動車の電動パワートレーン「e-POWER」搭載車の国内販売累計が、50万台を突破。2022年には欧州においても6車種のBEV、e-POWERモデルを展開。日本向けのe-POWERとしてはノート、セレナ、キックスに次いで2022年夏にエクストレイルがローンチされる計画になっている。

画像: 日産は、電動化されたモデルの投入だけでなく、生産技術のイノベーションなどクルマの「ライフサイクル」全般でのカーボンニュートラル化を目指している。

日産は、電動化されたモデルの投入だけでなく、生産技術のイノベーションなどクルマの「ライフサイクル」全般でのカーボンニュートラル化を目指している。

次世代モータリゼーションの電動化、その先にある2050年までの「クルマのライフサイクルでのカーボンニュートラル実現」に向けた日産のAmbition(野心)は、着々と達成されつつあるように思える。

2021年の秋に発表された長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」では、5年間で電動化を一気に加速させることも表明している。約2兆円もの投資によって、2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種の「ワクワクする」新型電動車を投入、グローバル市場でのモデルに占める比率を平均50%以上まで拡大させる計画だ。

今回、オンライン形式で技術セミナーが開催された全固体電池(ASSB:All-Solid-State Battery)は、そんな「日産の野心」を実現させるためのカギを握るテクノロジーだ。

そもそもリチウムイオン電池は、どうして素早く充放電できるのか

「全固体(リチウムイオン)電池」とは、近年の電動化車両で一般的に搭載されている「液系リチウムイオン電池」に代わる、次世代蓄電池のこと。構造的な違いを語れば難解な化学領域の話になるのだが、かいつまんで説明しておこう。

画像: 2021年11月に経済産業省が実施した「第1回 蓄電池作業戦略検討官民協議会」において配布された資料「蓄電池産業の現状と課題について」より。政府が目標として掲げる2025年のカーボンニュートラル実現のカギを握る技術のひとつが蓄電池の革新であり、とくに車載用蓄電池については全固体電池への移行に大きな関心を寄せていることがわかる。 出典:経済産業省 www.meti.go.jp

2021年11月に経済産業省が実施した「第1回 蓄電池作業戦略検討官民協議会」において配布された資料「蓄電池産業の現状と課題について」より。政府が目標として掲げる2025年のカーボンニュートラル実現のカギを握る技術のひとつが蓄電池の革新であり、とくに車載用蓄電池については全固体電池への移行に大きな関心を寄せていることがわかる。

出典:経済産業省
www.meti.go.jp

まずリチウムイオンバッテリーは、正極活物質と負極活物質の間のリチウムイオンの移動によって、充放電している。これまでは一般的に正極にコバルト、負極にグラファイトといった希少鉱物(つまりおおむねお高い)素材が使われており、それらが有機電解「液」の中に浮かんでいる状態をイメージして欲しい。この時、正負を絶縁するのは、間に挟まれたセパレータの役目だ。

全固体電池はその液体の代わりに、固体電解質を使って物質を固定する。同時に、正極と負極を絶縁状態にしている。ここで「固体を使う化学的根拠」を語れば、さらに深みにはまっていくような気がするので割愛するが、要するに液体の電解質を使う場合と比べて多くのメリットが期待できるのだ。

This article is a sponsored article by
''.