日産自動車は2022年4月8日、かねてから2028年の実用化を公言していた次世代バッテリー技術「全固体電池」の開発状況に関する技術セミナーを開催した。小型軽量化や航続距離の延長が期待される夢の蓄電池は、バッテリーEVのさらなる多様性を広げてくれる可能性を秘めている。EV価格の常識まで、もしかすると変えてしまうかもしれない。

実用化の「早い遅い」ではなく、究極の性能を求めて

研究・開発体制を一気に加速させ始めた日産だが、この全固体電池をまずはBEVに搭載することを目標にしている。

画像: アリアに続く次世代クロスオーバーSUVとしてNissan Ambition 2030で発表されたコンセプトカー「CHILL-OUT(チルアウト)」。英国サンダーランド工場において、その市販モデルが生産される。ただし全固体電池が搭載されるかどうかは、定かではない。

アリアに続く次世代クロスオーバーSUVとしてNissan Ambition 2030で発表されたコンセプトカー「CHILL-OUT(チルアウト)」。英国サンダーランド工場において、その市販モデルが生産される。ただし全固体電池が搭載されるかどうかは、定かではない。

画像: 同工場は、日産がゼロ・エミッション実現に向けて展開する新たなソリューションのひとつとして、EV36Zeroプロジェクトの一環を担う拠点。隣接地には車載電池大手のエンビジョンAESCグループが、エネルギー密度を向上させた次世代バッテリー(液体リチウムイオン電池)を生産する大規模ファクトリーを建設する計画だ。こちらでも将来的には、全固体電池を生産することになるのだろう。

同工場は、日産がゼロ・エミッション実現に向けて展開する新たなソリューションのひとつとして、EV36Zeroプロジェクトの一環を担う拠点。隣接地には車載電池大手のエンビジョンAESCグループが、エネルギー密度を向上させた次世代バッテリー(液体リチウムイオン電池)を生産する大規模ファクトリーを建設する計画だ。こちらでも将来的には、全固体電池を生産することになるのだろう。

実は同様の全固体電池については、トヨタも2020年代前半の実用化を目標に研究・開発を進めているのだが、早期の実用化につなげるためにこちらはまず、ハイブリッド車への搭載を考えているのだそうだ。提携関係にあるマツダ、スバルにも採用されることだろう。ちなみに国産勢では、ホンダも2030年ごろの実用化を謳っている。

世界的にも全固体電池の研究・開発は「レース」の様相を呈している。メルセデス・ベンツとステランティスグループは、北米のベンチャー企業ファクトリアル・エナジー社との共同開発契約を発表。2026年から2027年までの車両への搭載を目指す。

BMWとフォードもまた共同で支援する形で、北米のソリッド・パワー社と提携、共同開発を進めている。BMWは2025年までに試験車両を走らせることが目標だ。

そんな中で、一歩先んじている印象があるのが、フォルクスワーゲングループだろうか。米国カリフォルニア州サンホセに本社を置くクアンタムスケープ社(米国スタンフォード大学発となるスタートアップ企業)に、多額の投資を行っている。2024年には商業生産を開始、2025年にはそれを搭載したBEVを発売する方針だという。

もっとも日産によれば、けっして実用化の早さを競うつもりはないらしい。なにしろ同じ「全固体電池」でも、その構造による性能差があるのだという。中には「全」ではなくゲル状の電解液を使った「半」固体電池の研究・開発を進める企業もある。

それでも「究極の全固体電池を目指す」という日産の哲学にブレはない。基本的には社内で研究・開発が進められているものの、同時にグローバルなネットワークの活用にも、非常に積極的だ。

たとえば米国カリフォルニアのNISSAN NORTH AMERICAに計算材料科学の専門家チームを集め、NASAやUC San Diegoなどとともに最適な素材研究のスピードを加速させている。他にも正極の素材や硫化系固体電解質との精密な混合といった、さまざまな技術的ブレークスルーが実を結びつつある。

「もっと災害に強い電気自動車」が誕生する可能性も

技術開発というハード面での電動化普及に弾みをつける一方で日産は、ソフト面でも積極的な活動を続けている。

画像: ブルー・スイッチにおける災害連携は、非常時に停電してしまった自治体などに対して、外部への給電機能を備えたリーフを貸し出し、電力源として活用する社会貢献活動だ。そんなシーンでも、全固体電池の実用化によって、今以上に活躍することが可能になるかもしれない。

ブルー・スイッチにおける災害連携は、非常時に停電してしまった自治体などに対して、外部への給電機能を備えたリーフを貸し出し、電力源として活用する社会貢献活動だ。そんなシーンでも、全固体電池の実用化によって、今以上に活躍することが可能になるかもしれない。

たとえば2018年にスタートした「日本電動化アクション『ブルー・スイッチ』」に代表される地道な周知・普及の取組みは、確かな手ごたえとして日産の電動化へのモチベーションを高めているようだ。

ブルー・スイッチの主たる活動と言えるのは、電気自動車を活用したさまざまな取り組みだ。災害連携などで2019年には30の地方自治体などとの連携を目指していたが、2020年には100件を超え、年々そのつながりが広がりを見せている。

それもまた、日産の電動車たちがもたらしてくれる「わくわく」のひとつ、と言えそうだ。

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