NEXCO中日本のグループ会社である中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京は、車両を走行するだけで橋梁の伸縮装置(橋梁のつなぎ目)の変状を検知する日常点検車両「ROAD CAT(ロードキャット)」を開発した。

点検員の安全性向上や省力化、点検結果の定量化を図る

NEXCO中日本管内に橋は約4000もあり、またこうした橋に約1万1000基の「橋梁の伸縮装置」が設置されている。伸縮装置とは、季節や気温の変化により橋が伸び縮みした時のために空けておく隙間のこと。これは鋼製や硬質なゴム製でできているため疲労亀裂や破損などにより段差を発生することがあり、走行中のドライバーに支障を与えるだけでなく交通事故の原因につながってしまうのだ。

画像: 高速道路の路肩に降りて異常音などを確認する降車点検の様子。

高速道路の路肩に降りて異常音などを確認する降車点検の様子。

そこでNEXCO中日本は、ドライバーが安全で快適に走行できるよう点検を常に行ってきた。橋梁の伸縮装置に異常がないか車上から目視で確認(週2回以上)、高速道路の路肩に降車して異常音を確認(年2回)してきた。しかし、こうした点検にはいくつかの課題がある。とくに降車しての点検は路肩からの目視点検、車両通過時の異常音などを確認するため、点検員の安全性確保に加えて、聴覚や触覚など人の感覚に頼る定性的な(数値化できない)点検となっていることだ。

そこで、「降車することなく安全な点検の実施」と「定量的な点検結果の取得」および「路上規制の削減」を目的として、日常点検車「ROAD CAT(以下、ロードキャット)」が開発された。その名称は、もの音や振動に敏感な猫のようなセンサーを搭載し点検する車両であることから名づけられた。

画像: 日常点検車「ROAD CAT(ロードキャット)」の構造図。

日常点検車「ROAD CAT(ロードキャット)」の構造図。

ロードキャットは、車両が伸縮装置を通過するときに発生する音から伸縮装置の健全性を計測するシステムと、変状部位を特定するためのシステムで構成する「JI(Joint Inspection:ジョイント インスペクション)システム」を搭載している。

伸縮装置の健全性を計測するシステムは、後輪のタイヤ付近に配置した小型マイクロフォンと振動センサーにより、伸縮装置を通過する音と車両の振動加速度を計測する。計測したデータを健全時のデータと比較し変化(差分)を分析することで健全度を評価できる。

一方のJIシステムは、レ-ザー変位計を複数配置することにより、約80km/hで走行しながら、1万分の1秒単位で路面の段差量を計測し、異常な音や振動が発生したタイミングと照合することで、伸縮装置の変状部位を正確に計測できるという。

画像: ロードキャットに複数配置されたレーザー変位計。

ロードキャットに複数配置されたレーザー変位計。

ロードキャットは、一定以上の隙間により音や振動を発生しやすい伸縮装置を対象とし、NEXCO中日本管内の約半数の伸縮装置の点検車両として運用されることを想定している。これらの適用可能箇所を対象にロードキャットを導入することで、点検員の路上作業削減による安全性向上や省力化、点検結果の定量化が図られる。

まずは愛知県、岐阜県、三重県内の路線で試行導入し、点検結果の蓄積や評価の検証を行い、その後本格展開を行う予定だ。見た目はトヨタ ハイエースをベースにした普通のワンボックスだが、中身にハイテクを詰め込んだ「ロードキャット」。近いうちに、高速道路上で検査しているシーンが見られることだろう。(写真・図版:NEXCO中日本)

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