プジョー好きの期待どおりしっとりとした乗り味
走り出してすぐに気づくのは、発進時の力のゆとり、滑らかな加速、落ち着きのある振る舞い、静けさといった、モーターとバッテリーを備えたクルマならではのメリットだ。クラスを超えた上質さと上品さ。そのあたりが選択の基準になる人には間違いなくこれがベスト308だろう。
バッテリーの残量があるときには極力モーターだけで走らせようとするから、しばらくはEVの魅力を味わっていられるわけだが、エンジンが始動する瞬間も振動や音は気にならないレベル。走行中もよくエンジンが停止し再始動もするが、EV走行とハイブリッド走行の切り替えはとてもスムーズ。回生ブレーキと機械式ペダルの協調制御もうまく働いて、自然な感覚だ。かなり洗練されている。
洗練といえば、乗り心地にもその言葉が当てはまる。剛性の高さが感じられる車体、よく動く足、加えて重量だ。ガソリンエンジンの308と較べて300kg以上重いわけだが、その重さが余計な振動を封じ込めるのか、プジョー好きが期待する独特の「らしい」しっとり感が濃厚に感じられて、それが心地良いのだ。オートルートの流れにのった120〜130km/hでの巡航では、レーンチェンジでの動きもしっとりとして正確、乗り心地もしなやかにしてフラット。高級感すら覚えるほどだ。
プジョーのハッチバックだから当たり前のようにスポーティなテイストをも期待してしまうわけだが、その点でも好印象だった。1.6Lのピュアテックエンジンはそのままでも低速トルクは豊かな部類だが、モーターが瞬間的にそれを増強してスタートダッシュは鋭いし、そのまま6000rpmあたりまで自然にパワーを膨らませながら気持ち良く伸びていく。
無理にスポーティな味わいを狙ったチューニングにしているような感じは微塵もないが、それでもしっかり快さと楽しさを感じられるし、得られるスピードにも十分に満足がいく。そういうところがまた実にプジョーらしいのだ。
ハンドリングも然り。重いバッテリーを後席の下あたりに配置して重心を調整しているため、低い位置にある軸を中心にロールしていく感覚を伴いながら、スイッと気持ち良く曲がる。ロールとともに後ろ足のトーインをジワッと強めていき、前輪駆動なのに後輪が車体をラインにのせていくようなプジョーならではの独特の気持ち良さもしっかりある。ここでも車体の重さが効いてるのか、常に四本足で路面をつかんでいるような「猫足」感覚は、さらに濃厚だ。
やはりこちらも無理にスポーツ仕立てにしたような印象はないが、軽やかというよりすみやかでたおやかと表現したくなるそのテイストは間違いなくスポーティで、曲がるという行為が楽しい。
308 GTハイブリッドは、モーターとバッテリーを得たことでプジョーであることの濃さがさらに強くなったように感じられるクルマ。日本上陸を待ってみるだけの価値はあると思うのだ。(文:嶋田智之)
プジョー 308 GTハイブリッド主要諸元
●全長×全幅×全高:4420×1850×1475mm
●ホイールベース:2680mm
●車両重量:1660kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1598cc
●最高出力:132kW(180ps)/6000rpm
●最大トルク:250Nm/1750rpm
●モーター最高出力:81kW(110ps)/2500rpm
●モーター最大トルク:320Nm/500-2500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・40L
●WLTCモード燃費:17.6km/L
●タイヤサイズ:225/40R18