2009年のジュネーブオートサロンで、ベントレー史上最強(当時)となるコンチネンタル スーパースポーツがデビューした。「究極のベントレー」とは果たして、どんなモデルだったのか。2009年秋にスペインで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年12月号より)

走り出した瞬間から違いがわかる。体が軽い。

ストンと尻を下ろした。バケットゆえに、ストンだ。ダッシュボードなど、前の景色そのものは見慣れたものだが、着座位置が低いため、かなりスポーティな雰囲気に浸れる。さらに車高も下がっているため、路面が近い。もうこの時点で、走りへの期待が高まってくる。こういう感覚は、わたしたちがよく知る戦後のロードゴーイングベントレーでは、初めてのことじゃないだろうか。

画像: カーボンファイバー、アルカンターラを巧みに配置して、高品質なイメージを演出している。

カーボンファイバー、アルカンターラを巧みに配置して、高品質なイメージを演出している。

スタートボタンを押して、エンジンを掛けた。ボワッと迫力のサウンドとともに目覚め、すぐさま分厚く野太いアイドリングサウンドに落ち着き、パテオの石畳を這う。Dレンジに入れて、ゆっくりと走り出した。

ホテルの敷地から出る前に、もう明らかにノーマルと違う点が感じられる。なんだか体が軽い。自重は2トンオーバーだから、軽量化そのものは実は大したことがない。けれども動きが軽快で、クルマがひとまわり小さく感じられる。まるでエンジンが小さくなったかのように、ノーズがステアリング操作に対してダイレクトに小気味よく動く。加えて、センター中立付近がとてもしっかりしているから、よけいに動きが軽快に思えるのだ。

乗り心地も悪くない。足下の軽量化で、ドタバタすることを懸念していたが、専用セッティングのCDC(エアサス)のおかげか、突き上げに対する収まりもよく、硬いが不快な印象は皆無だ。

街中をすいすいと通り抜け、郊外へ向かう高速道路に入った。まずはベントレー史上最強の630psまで高められた(そして日本では関係ないがE85対応のグリーンな)W12ツインターボの力を解放してみる。低速域からのトルクの「モリ」 がまったくノーマルとは異なる。クルマがさらに小さくなって、中身がさらに凝縮したように感じる。

アクセルペダルを踏み込むと足の裏に膨れ上がったゴムまりのようなプレッシャーを受け、弾け飛ぶように加速する。とくに4000rpmあたりからのトルクの「ノリ」が素晴らしい。足裏に伝わった圧力が胃の中まで届いて大笑いしている。

FRスポーツカーのように振り回して走ることができる

専用セッティングの6速ATのシフトアップフィールもダイレクトかつ豪快で素早い。ノーマル比50%の速さ。シフトアップ時に燃料カットするシステムだから、変速時にはバッバッと迫力のサウンドを伴う。

画像: 630psまで出力が高められたW12DOHCツインターボを搭載。パワーウエイトレシオは3.56kg/ps。

630psまで出力が高められたW12DOHCツインターボを搭載。パワーウエイトレシオは3.56kg/ps。

もちろん、その間の姿勢も申し分ない。軽やかなステアリングフィールは影をひそめ、路面をがっしりとくわえこんで離さない。もちろん、トレッドの広がった後輪も同様だ。

2トンオーバーのクルマにしてはあまりにも峻烈な加速を見せるため、速度感覚が実際にまったく追いつかない。高速を降り、ワインディングに入った。さすがにスペインの狭い山間路では巨体を持て余し気味だ。それでも、リズムに乗ってくれば、ノーズもきれいに内へ向きはじめ、FRスポーツカーのように振り回して走れるようになる。腰下の軽量化と4WDの駆動力配分をリアに多めに設定しているからだ。

そして、そのまま試乗車でサーキットを攻めこんだ。市販車最大級のカーボンブレーキが2トンの車重を操る基礎力になる。文句ナシに楽しい。コンチネンタルで、かくも面白くサーキットを走れるなんて……。

ベントレーはスポーツカーである。その伝統を、彼らは再び取り戻したと言ってよさそうだ。(文:西川 淳)

ベントレー コンチネンタル スーパースポーツ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4804×1945×1380mm
●ホイールベース:2745mm
●車両重量:2240kg
●エンジン:W12DOHCツインターボ
●排気量:5998cc
●最高出力:463kW(630ps)/6000rpm
●最大トルク:800Nm/2000-4500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●EU総合燃費:6.1km/L
●タイヤサイズ:275/35ZR20
●最高速:329km/h
●0→100km/h加速:3.9秒
※EU準拠

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