次世代マクラーレンの真価を問われる、新しい骨格と心臓
アルトゥーラはマクラーレン初の量産型PHEVだ。「量産型」といっても、手作りに近い工程でスーパースポーツカーを生産するマクラーレンゆえ、その数は年間数千台程度だが、同社がこれまでにリリースしたPHEVのP1やスピードテールはいずれも100台単位の限定生産モデルだったから、それらに比べればはるかに規模が大きいことになる。
しかも、マクラーレンはアルトゥーラで初めてモノコックやエンジンを一新。とりわけバンク角120度のV6エンジンはフェラーリ296GTBと同じ特徴的なレイアウト。これがプラグインハイブリッドと組み合わされてどのようなパフォーマンスを発揮するかが注目された。
試乗会が行われたのはスペインアンダルシア地方。市街地を走り出してまず驚いたのは足まわりのしなやかさに磨きがかかったこと。この種の快適性では定評のあるマクラーレンだが、アルトゥーラではさらに乗り心地がよくなっていた。
しかも、ホイールの位置決めが正確になったのか、これまで以上にシャープなハンドリングを楽しめる。本来は相反する乗り心地とハンドリングを一気に改善できたのは、新しいモノコックとリアのマルチリンクサスペンションを採用したおかげだろう。
システム680psのパワーを受け止める、秀逸なシャシ
エンジンは、V6という先入観を見事に裏切るスムーズな感触が印象的で、低速域から柔軟で扱いやすい特性に躾けられていた。とはいえ、システム出力は680psに達するのだから絶対的なパフォーマンスに不満を抱くはずもない。
その印象は、公道走行に続いて行われたサーキット走行でも、まったく変わらなかった。
この驚くほどパワフルなパワートレーンを凌ぐ「速さ」を示したのがそのシャシで、アスカリサーキットで懸命に攻めてもリアタイヤのグリップが失われる気配は微塵も感じられなかった。このスタビリティの高さは、いかにもマクラーレンらしいもの。
296GTBほどの刺激はないかもしれないが、徹底的に洗練の度合いを高めたという意味で、アルトゥーラは新世代マクラーレンの幕開けに相応しいモデルといえる。(文:大谷達也/写真:マクラーレン・オートモーティブ)
マクラーレン アルトゥーラ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4539×1913×1193mm
●ホイールベース:2640mm
●車両重量:1498kg(液体+90%の燃料)
●エンジン:120度V6 DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:2993cc
●システム合計最高出力:500kW(680ps)/7500rpm
●システム合計最大トルク:720Nm/2250−7000rpm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●燃料・タンク容量:プレミアム・72L
●タイヤサイズ:前235/35ZR19、後295/35ZR20