16代目クラウンの誕生を機に、各世代のカリスマ性を彩ってきた「はじめて」をあらためて紐解く特別連載企画。第4回は、1971年に誕生した第4世代「MS6#/7#型」をご紹介しよう。個性的なスタイリングは賛否両論を生み、販売的には不遇をかこったものの、今なお「クジラ・クラウン」の名で愛される忘れがたい存在である。(Motor Magazine Mook 「TOYOTA CROWN 13th」より)

第4世代クラウンとは──空力を重視してスピンドルシェイプに。2.6Lの大排気量化も

2ドアハードトップを加えた3代目クラウンはトヨタの目論見どおり、個人ユーザー層の開拓に成功して好調に販売台数を伸ばした。だが、デビューから4年を待たず、4代目にバトンを託している。

画像: トヨタ博物館所蔵の72年式スーパーサルーン。全高を旧モデルよリ25mm低くし、三角窓を廃したロングノーズ・ショートデッキのスタイルだ。

トヨタ博物館所蔵の72年式スーパーサルーン。全高を旧モデルよリ25mm低くし、三角窓を廃したロングノーズ・ショートデッキのスタイルだ。

1971年2月、個性豊かな4代目クラウンがベールを脱いだ。空力を考慮したボディ・ライン「スピンドルシェイプ(紡錘型)」の中に、かつてない豪華さを織り込んでの登場だ。

ボディバリエーションは、MS60型を名乗る4ドアセダンとMS70型と呼ばれる2ドアHTを設定した。セダンは丸型4灯式ヘッドランプ、2ドアHTは角型ヘッドランプを採用する。

話題を呼んだのはなんといっても、大胆なデザインのエクステリアだ。

ボンネットをかさ上げし、フードとフロントグリルの間に車幅灯とウインカーランプを内蔵した。バンパーはボディと一体になったものに変わり、ボディと同色に塗られている。三角窓を取り去り、本格的なベンチレーションシステムを導入したのも、この4代目からだ。2ドアHTはアイラインウインドーを採用し、Cピラーにエアアウトレットを刻んでいる。

画像: 角形メーターが高級、丸型多連がスポーティだった時代。セダンのATシフトはまだコラム式だ。安全性面では、コラプシブル・ハンドルをオーナーデラックス以上は標準装備。後期には、ABSの前身である後輪ESCなど様々な電子制御技術の導入が始まった。

角形メーターが高級、丸型多連がスポーティだった時代。セダンのATシフトはまだコラム式だ。安全性面では、コラプシブル・ハンドルをオーナーデラックス以上は標準装備。後期には、ABSの前身である後輪ESCなど様々な電子制御技術の導入が始まった。

装備品は各車種とも実に豊富でさまざまな趣向が凝らされている。たとえばスーパーサルーンでは、FM/AMの足踏み式オートチューナー、20km/h以上のスピードになると自動的にロックするオート・ドアロック、運転席から操作できるトランク・オープナーなどを標準装備としている。もちろん、パワーステアリング、パワーウインドー、ディスクブレーキなどは標準装備である。

エンジンは、2LのM型直列6気筒を主役とした。M-B型(125ps)、M-C型(105ps)、M-D型(115ps)と、3タイプのチューニングがある。ほかに、伝統の直列4気筒OHVエンジンの5R型(98ps)を設定する。

ATは3速タイプだが、SUツインキャブ装着のSLは最先端をいく電子制御3速AT(EAT)だ。発売から2カ月後の5月にはフラッグシップの2600スーパーサルーンを追加した。

「高級車」らしい大排気量エンジン搭載。環境性能も最先端に

搭載される2.6Lの4M型エンジンは、M型エンジンのボア×ストロークを拡大し、80.0×85.0mmで、総排気量=2563ccのスペックを持つ。この排気量アップの効果は絶大で、中低速域のトルクアップによる軽快な走行フィールを、初めてクラウンにもたらした。

画像: 4M型SOHCエンジンは大排気量が生み出す豊かな低速域トルクの厚みがポイント。130ps20.0kgmを絞り出す。

4M型SOHCエンジンは大排気量が生み出す豊かな低速域トルクの厚みがポイント。130ps20.0kgmを絞り出す。

コード・ナンバーの4M型が示すように、キャブレーション・システムは、一般的なダウン・ドラフト式の2バレル・キャブレターを採用。パワーは140ps/5400rpm、トルクは21.0kgm/3800rpmを発揮した(当初は130ps。72年10月のMCでパワーアップ)。

72年秋には2600スーパーデラックスを送り込むなど、積極的なバリエーション展開を図る。だが、個性の強いスタイルは保守的な「クラウン党」から敬遠され、ライバルである日産セドリック/グロリア連合軍の後塵を拝した。(4代目MS60系 1971~1974年 生産台数:26万7500台)

そこでクラウンは発売から3年目を迎えた73年2月、フルチェンジに近いフェイスリフトを行なっている。フロントまわりを大きく変えただけでなく、リアまわりもデザインを変えた。

このMCではエンジン性能の向上、排出ガス対策、機能向上を実施。M型エンジンは、燃焼室の球面加工を3球面から4球面へ、クランクシャフトのバランスウエイト数を4個から8個へ、ロッカーアームの軽量化、圧縮比アップ、温度コントロール付きファンの採用などの改良が施された。

これらの改良により、静粛性や出力の向上を果たす。M-C型は105psから115psへ、M-B型は125psから130psへと、最高出力の向上と共に、中低速域トルクをアップさせた。トランスミッションも5速フロア・シフト仕様をセダンSL、ハードトップ系全車に設定した。

74年1月には排気対策の要請から、電子制御燃料噴射システムを採用したM-E型エンジンを搭載する。先進のEFIシステムを得たM-E型は135ps/6000rpm、17.5kgm/4400rpmの性能を発揮する。

新たなユーザー層の獲得に意欲を燃やすとともに、時代をリードした硬派の高級セダンが4代目クラウンだ。

■トヨタ・クラウン スーパーサルーン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4680×1690×1420mm●ホイールベース:2690mm●車両重量:1380kg●エンジン:直6SOHC●総排気量:1988cc●最高出力:115ps/5800rpm●最大トルク:16.0kgm/3600rpm●トランスミッション:3速MT●駆動方式:FR●当時の車両価格(税込):127.8万円

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