スズキのハイト軽ワゴン、スペーシア シリーズに新たに追加されたのは、4ナンバー(バン)の「スペーシアBASE」だった。その登場のいきさつと、最近の軽自動車市場について考えてみたい。

4ナンバー化しても安全&快適装備に抜かりはない

画像: 4ナンバー化して簡略化されたスペーシアBASEのリアシート。後ろに備わるのがマルチボード。

4ナンバー化して簡略化されたスペーシアBASEのリアシート。後ろに備わるのがマルチボード。

5ナンバー軽乗用車の自動車税は1万800円だが、4ナンバー軽では5000円となる。また、車検も2年に1回(新車登録時も2年)で済むといった経済的なメリットもある。

そのかわり、4ナンバーは5ナンバー(乗用車)より安全&快適装備は劣る、と思われがちだが、スペーシアBASEは「スズキセーフティサポート」と4エアバッグを全車に標準装備しているし、XFでは全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロールや、作業での動線を考えた右側パワースライドドアも標準装備。

LEDヘッドランプ&フォグランプ、運転席&助手席シートヒーター、フルオートエアコンなども標準装備され、もはや装備的には乗用車版のスペーシア シリーズに引けをとらない。純正アクセサリーパーツも豊富に設定されているから、アウトドアレジャーの楽しみを増幅してくれるだろう。

4ナンバー化してリアシートを簡略化したことで、仕事にもレジャーにも使えるスペースを手に入れ、しかも使い勝手も高めたスペーシアBASE。前述のホンダ N-VANの登場が火付け役となったのだろうが、2021年末にはダイハツもアトレーを4ナンバーへと回帰させ、仕事でも趣味でも使えるクルマとした。こうした軽自動車の新しい流れは、他のメーカーにも波及していくことは間違いないだろう。

ライフスタイルの多様化に寄り添う「クロスオーバー」の新ジャンル

ところで、クルマ業界で「クロスオーバー」といえば、クロスオーバーSUV、つまり乗用車をベースにラフロードなども走れるようなタイプのクルマを示すが、そもそもは「異なる要素がお互いの境界線を越えて混じり合ったもの」のことだ。かつては、音楽でもクロスオーバーと呼ばれるジャンルが存在したのだが。

画像: アトレーもフルモデルチェンジで4ナンバーに回帰して、仕事にもレジャーにも使えるクルマになった。

アトレーもフルモデルチェンジで4ナンバーに回帰して、仕事にもレジャーにも使えるクルマになった。

そういう意味では、こうした仕事にもレジャーにも使える4ナンバー軽自動車も、クロスオーバーと呼べるだろう。方向は少し違うけれど、SUV的要素を加えて人気を集めているスペーシアギアや、ハイトワゴンにスライドドアを与えて成功したムーヴキャンバスなども、クロスオーバーな軽自動車だ。

既にアナウンスされているが、ダイハツではハイト軽ワゴンのタントにSUVテイストを加えたタント ファンクロスを秋には発売予定だ。ひょっとしたらホンダも、N-BOXで同様のモデル「N-BOX クロスター」なんてのを出してくるかもしれない。いまはEVに注力しているNMKVも、何も考えていないことはないだろう。

ジャンルを超えてクロスオーバーに展開を始めた軽自動車のマーケット。興味深いモデルが、今後ますます登場してくることに期待したい。(写真:永元秀和、ほか)

画像: 2022年秋に発売予定のタント ファンクロスは、既に内外装の画像が公開されている。

2022年秋に発売予定のタント ファンクロスは、既に内外装の画像が公開されている。

■スペーシアBASE XF 主要諸元

●全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm
●ホイールベース:2460mm
●車両重量:870kg
●エンジン:直3 DOHC
●総排気量:658cc
●最高出力:38kW(52ps)/6500rpm
●最大トルク:60Nm(6.1kgm)/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー ・27L
●WLTCモード燃費:21.2km/L
●タイヤサイズ:155/65R14
●車両価格(税込):154万7000円

画像: 室内空間を自由にアレンジ【スズキ スペーシア BASE】 youtu.be

室内空間を自由にアレンジ【スズキ スペーシア BASE】

youtu.be

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