先進安全装備が普及する中で、重要性が増している「ADASエーミング」。具体的にはどんな作業を行うのか、使用されるツールを中心にその基礎を説明していこう。

ADAS整備にも、新たな責任問題が浮上するかも

2021年11月以降に販売される新型国産乗用車から衝突被害軽減ブレーキが搭載義務化されたことで、車線保持アシストシステム、アダプティブクルーズコントロールなど、さまざまな先進安全運転機能(ADAS)を構成する機器が、道路運送車両法における保安基準の対象として指定された。

画像: 自動車関連の良質な製品やパーツを販売するファインピース株式会社は、2020年3月、ボッシュ株式会社との取引基本契約を締結。DAS3000などの取り扱いを行っている。

自動車関連の良質な製品やパーツを販売するファインピース株式会社は、2020年3月、ボッシュ株式会社との取引基本契約を締結。DAS3000などの取り扱いを行っている。

自動車整備の分野でも、その影響は大きい。たとえばぶつからないブレーキの誤作動によって事故が起きてしまった時、なんらかの整備不良が疑われてしまう可能性もあるからだ。

実際、いわゆる自動緊急ブレーキが予期せず作動してしまう「ファントムブレーキ」問題は、世界各国で問題が顕在化している。その原因について、システムそのものの不具合が疑われるだけでなく、整備時の瑕疵、具体的には「エーミング」という作業によるセンサー類の調整に問題があったのではないか、という責任論が持ち上がる可能性も否めない。

そうした課題に対応するために国土交通省は、「特定整備認証」のような制度整備によって正しい整備作業を行う担い手の確保に努めるとともに、定められた機能的要件を備えた作業用スキャンツール(自動車の電子システム用故障診断機)の購入を金銭的に補助する制度を実施している。

導入支援の対象者はもちろん整備などの事業に関わる人たちだけれど、そこで使われる道具類や実際の作業について、自動車ユーザーの立場からも知識として知っておいた方がいいかもしれない。

レーザー光を使って基準点の位置決めを容易に

エーミング作業のすべてを語ると一冊本ができてしまいそうなので、今回はわかりやすい例として、グローバルで補修用ツール、サービスパーツを開発・製造・販売しているボッシュが提供する、ADASエーミングツールを紹介しよう。

画像: SCT425・Pアシストポールの当時の参考価格は87万円(税抜き)。後にファインピース株式会社が代理店として扱うことになり、そのHPでは「BOSCH SCT415 レーザーユニット付き 汎用アシスラインレーザー治具キット(カメラ用)」として95万7000円(税込)で販売されている。

SCT425・Pアシストポールの当時の参考価格は87万円(税抜き)。後にファインピース株式会社が代理店として扱うことになり、そのHPでは「BOSCH SCT415 レーザーユニット付き 汎用アシスラインレーザー治具キット(カメラ用)」として95万7000円(税込)で販売されている。

ボッシュのオートモーティブ アフターマーケット事業部が、一般整備工場向けのADASエーミングツールを発売したのは、2018年9月のこと。当時は自動ブレーキなどの先進運転支援システムの新車搭載が7割近くまで達し、修理時のパーツやガラスの脱着にともなうセンサー、カメラ類の正しい調整が急務となっていた。

この時、販売されたのは「SCT415・Pアシストポール」と「ターゲットボード」のふたつ。エーミングの作業の根幹となるのは、ターゲットボードを使っていわゆる基準点を設定した上で、スキャンツールによりカメラやセンサーにターゲット位置を学習・記憶させることにある。

準備段階では床面が水平で適正な間隔を保つことができる作業場所の確保だとか、正しいターゲット位置の割り出しといった作業が必要になる。ボッシュのアシストポールの場合は、レーザー光を利用することでその設定の時間が大幅に短縮できる、というのがセールスポイントだった。

ADASの多様化に伴ってエーミングツールにも進化が

2022年2月には、業界初のツールとして、デジタル画像認識技術を採用したエーミング機器「ボッシュDAS3000」の販売を開始している。そのウリは、これまでアナログで行われてきた作業プロセスをデジタル化。本体に搭載されたカメラで距離や角度を高精度に計測、基準点の位置決めを短い時間で正確に行い、人的なミスを極力回避することができるという。

画像: 自動車整備業界初の、デジタル画像認識技術を採用したエーミング機器「ボッシュDAS3000」。

自動車整備業界初の、デジタル画像認識技術を採用したエーミング機器「ボッシュDAS3000」。

このDAS3000は、ADASそのものの進化にも対応が可能だ。ナイトビジョン、サラウンドビューモニター、LiDARなどのセンサー類への対応も考慮されている。自動車の機能が日々進化するのと同じように、自動車整備の技術も、私たちが知らないところで大きくアップグレードされているかもしれない。

整備や点検、修理を依頼する側としても、それについての知識や最新情報を得ていくことは、けっして無駄なことではないだろう。それどころか今後は、新しい時代の整備について知識を持っていることこそが、愛車と付き合う上で不可欠なものになるのかもしれない。

画像: SCT 415:フロントホイールセンターからの距離による位置決め / Bosch Diagnostics - SCT 415 for ADAS youtu.be

SCT 415:フロントホイールセンターからの距離による位置決め / Bosch Diagnostics - SCT 415 for ADAS

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