新たな位置情報テクノロジー「What 3 Words」を採用
充実したSUVVのラインナップを誇るメルセデスは、近年SUVを主体にBEVを拡充させている。その第3弾として日本に導入されたのは、GLBをベースとするEQBだ。
スクエアな形状で手ごろなサイズながら室内空間が広く、3列のシートを備えたGLBBは、日本でも人気が高い。BEVとしては珍しい3列シートを実現している点がEQBの大きな特徴となる。
GLBに対し外見ではフロントグリルやリアエンド、ホイールなどいくつか差別化されていて、ひと目で区別がつく。AMGラインパッケージの有無で見た目の印象はだいぶ異なる。インテリアも各部をアルミ調のチューブ形状の採用や、エアアウトレットをモーターのコイルを想起させるローズゴールド色とするなど独自のデザインを採用する。
もちろん電動化で必要な情報の表示のほか、「Mercedes me connect」や「MBUX」にも電動化に合わせていくつかの専用の機能が用意されている。遠隔設定も可能なカーナビについては、3つの単語で場所を正確に表すという新しい位置情報テクノロジー「What 3 Words」を採用している点にも注目だ。
車内空間は変わっていないように見えるが、駆動用バッテリー等の搭載により2列目シート以降のフロアが高くなっており、GLBでは身長168cmまで対応できた3列目シートが、EQBでは165cmまでとなった。
身長172cmの筆者が座り比べてみると確かに違って、EQBの方が2列目の頭上のクリアランスが小さく、3列目もGLBなら若干隙間ができるところ、EQBでは頭頂部がルーフに触れるわけだが、よくぞこの程度の差にとどめたものだと感心する思いの方が上回る。
250と350 4マティックをラインナップ
発売時におけるラインナップは788万円の「EQB 250」と870万円の「EQB 3504マティック」の2グレードで、パワートレーンが大きく異なる。ポイントは先発のEQAとは異なり、出力密度、効率、出力定常性に優れることから、新たに同期モーターを採用したことだ。
EQB 250には190ps、385Nmを発生する新設計の同期モーターが搭載されており、前輪を駆動する。WLTCモード航続距離は実に520kmに達する。
EQB 350 4マティックはフロントに誘導モーター、リアに同期モーターを搭載して4輪を駆動する。システム最高出力は292ps、最大トルクは520Nmと強力だ。66.5kWhの駆動用バッテリーは共通で、こちらも468kmとなかなか長い航続距離を実現している。
どちらも走りはBEVらしく静かで滑らか、力強い点は同じ。先発のモデルと比べ、加減速の制御が緻密になり、繊細な操作にも応えてくれるように感じられた。
足の長さが強みのEQB 250もペダルを踏み込めばトルクステアが顔を出すほど力強いが、0→100km/h加速タイムが3秒も速いEQB 350はさらに力強い。加速の仕方もフロントで引っ張るのとリアから押し出すのでは感覚がぜんぜん異なり、EQB 350ではトルクステアもだいぶ軽減される。
回生レベルはパドルシフトにより3段階の強さが選べるのに加えて、レーダーが検知した先行車両との車間距離や走行状況に応じて回生レベルを自動調整するという「D Auto」というモードが設定されているのが特徴。このモードを選んでおけばどこでも効率よくスムーズに走れて重宝する。
足まわりは、AMGラインパッケージを装着すると、18インチから20インチになり、コンフォートサスペンションからスポーツサスペンションになる。後者には路面状況に応じて減衰力を最適に調整するアジャスタブルダンピングシステムが備わり、これがなかなかのもの。乗り心地は快適ながら挙動の乱れも小さく、フラット感のある走りを実現し、好印象だった。
いちSUVとして、いちBEVとして万能に使え、中身も最先端というのがEQBの強みである。(文:岡本幸一郎/写真:伊藤嘉啓)
メルセデスEQ EQB 350 4マティック主要諸元
●全長×全幅×全高:4685×1835×1705mm
●ホイールベース:2830mm
●車両重量:2160kg
●モーター:フロント交流誘導電動機、リア交流同期電動機
●システム最高出力:215kW(292ps)
●システム最大トルク:520Nm
●バッテリー総電力量:66.5kWh
●一充電走行距離:468km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:235/55R18
●車両価格(税込):870万円