従来同様にSWBとLWB2タイプのボディを用意
新型レンジローバーの外観はコンセプトモデルのように美しい。さまざまな部品の集合体としての存在ではなく、あたかもひとつの塊として、まるで無垢の素材から削り出されているみたいだ。
サイドから見ると、流れるようにしなやかなルーフライン、水平方向を強調したウエストライン、そして後方へ向けて盛り上がったロワシルラインという3つの重要なデザイン要素がある。ウインドウ部分のデザインでは、ピラー部がグロスブラック仕上げとなって、後部のピラーはリアクォーターガラスに統合されてルーフがまるで浮いているかのような造形、フローティングルーフグラフィックが実現されている。
また、リアまわりの造形も衝撃的。テールライトやウインカーなどがどこにあるのか、点灯していない状態だとまったくわからないのだ。
ボディは従来型と同じく、ホイールベースが2995mmのSWB(スタンダードホイールベース)と3195mmのLWB(ロングホイールベース)が用意されており、今回は、上級グレードの「オートバイオグラフィー P530 SWB」に試乗した。また、LWBモデルにはレンジローバー初の3列7人乗りが設定されている。
さて、乗り込もう。デプロイアブルドアハンドルを引いて、同時にせり出してくるサイドステップに足を乗せて車内へと入る。この電動式サイドステップはディーラーオプションで装着される仕様だが、固定式のサイドステップも用意されている。フロア高はそれなりにあるので、このステップがある便利さはすぐに実感することができる。
インテリアは水平基調で、研ぎ澄まされたあくまでもシンプルな美しさに満ちている。ハンドルはレンジローバーらしく大径で、回すことを意識してしっかりと操作するタイプだ。
伝統のコマンドポジションは新型になっても健在である
運転席のドライビングポジションはランドローバー伝統のコマンドポジションが踏襲されており、ボンネットの先端位置や左右フロントフェンダーのショルダー部がしっかりと見えるため、全幅2005mmというワイドボディながら車幅感覚をつかみやすい。
後方を確認するルームミラーはリアカメラを利用したディスプレイ式だが、ミラー下側のレバーを起こすことで伝統的なバックミラーの状態にして使用することもできる。メーターパネルは13.7インチのフルディスプレイ式。その左側、センターコンソール上方の13.1インチタッチスクリーンは、表面が天地方向にゆるくラウンドした形状となっていて目新しい。
走りはどうだろう。アクセルペダルを踏めば、ごく自然に滑らかにスタートして、決して飛び出すようなことはなく、それでいて十分な加速力を実感させてくれる。ワインディングロードでも、良好な視界とボディの見切りの良さでボディサイズは気にならない。
ちなみに新型レンジローバーでは、同ブランドとして初めて後輪操舵機構が標準装備となっている。後輪の操舵は50km/hまでの低速域では前輪と逆相に最大7.3度動き、高速域では後輪が前輪と同相に動く仕組みで、最小回転サークル10.95m(LWBモデルは同11.54m)を実現。一般道では後輪操舵の存在を意識させられないくらい、クルマとしての動きが自然に感じられた。
これは、新型レンジローバーに新しく採用された「ダイナミックレスポンスプロ」の効果も大きい。これは48Vシステムを採用した電動式スタビライザーによるアクティブロールコントロールシステムで、前後のサスペンションそれぞれにセットされている。
新型レンジローバーは、時代のトレンドに流されず自ら道を切り開いていく究極のラグジュアリーSUVである。機会を見つけてぜひD300モデル、そしてP530 LWBのハンドルも握ってみたいものだ。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁/写真:井上雅行)
ランドローバー レンジローバー オートバイオグラフィー P530 SWB 主要諸元
●全長×全幅×全高:5065×2005×1870mm
●ホイールベース:2995mm
●車両重量:2560kg(取材車はオプションのリアエグゼクティブシート装着により2660kg)
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●総排気量:4394cc
●最高出力:390kW(530ps)/5500-6000rpm
●最大トルク:750Nm/1850-4600rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●WLTCモード燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:285/45R22(取材車はオプションの23インチホイール装着でタイヤサイズは285/0R23)
●車両価格(税込):2228万円(取材車はオプション装着により2422万9630円)