北米で自動車の安全にまつわる「すべて」を統括するNHTSA
日本では自動車事故を起こした時、まずは警察、次に保険会社を依頼するのが当たり前。だが訴訟大国アメリカでは、そこにEDRデータを抽出し分析するための事故調査専門会社が加わってくるケースが多々ある。
彼らの収集したデータと分析レポートは、訴訟に発展した時の重要な証拠となりうる。同時に、その分析結果は米国運輸省内の専門部署に集約され、公開される場合がある。事故当時者のプライバシーに関わる部分以外は誰もが閲覧可能なその記録は時に、自動車の安全性能向上にも役立てたられる可能性があるという。
実に1972年から、そうした衝突調査データを収集、アーカイブス化してきたのが「NHTSA(National Highway Traffic SafetyAdministration:米国運輸省道路交通安全局)」だ。警察や保険会社のクラッシュにまつわるレポートを基本に、プロフェッショナルな事故調査チームによるSCI(Special Crash Investigation:特別事故調査)まで扱う。リコール情報の提供、安全規格の制定など、およそ自動車の安全にまつわる事項を総合的に管理、運営している。
そんなNHTSA(略称としては「ニッツァ」と読むらしい。日本人には発音しづらいが)が2021年6月29日、「Standing General Order(常設一般命令)」を発行した。これはSAEレベル2のADASおよびレベル3~5の自動運転システム(ADS)を搭載した車両の製造業者および事業者(機器、ソフトウェアを含む)に対して、衝突事故が起きた時、事故を認知してから24時間以内に報告する義務を課すものだ
■対象業者への報告義務付けの概要
●事故を知った1日以内に、企業は、病院で治療された怪我、死亡者、車両の牽引、エアバッグの展開、または歩行者や自転車などの脆弱な道路利用者を含む、レベル2 ADASまたはレベル3〜5のADS搭載車両を含むクラッシュを報告する必要がある。更新されたレポートは、クラッシュの発見から10日後に期限が切れる。
●毎月、企業はADS搭載車両が関与するその他、怪我や物的損害を伴うすべての衝突事故を報告する必要がある。
●レポートは、新しい情報または追加情報で毎月更新する必要がある。
●報告可能なクラッシュについては、会社が通知を受け取る場合、会社が命令を受けてから10日後に報告を提出する必要がある。
●報告は、事故に関する重要な情報を必要とするフォームを使用して、NHTSAに電子的に提出する必要がある。NHTSA はこの情報を使用して、フォローアップのためにクラッシュを特定する。
集められたデータは、先進運転支援技術が公道で使われる中で起きうる潜在的な安全上の問題と影響を特定することに利用される。たとえば自動運転車両の場合にはドライバーが操作していない「無人運転」状況の時の衝突に、共通のパターンを発見できる可能性があるという。運転中の体系的な問題についても示すことが可能で、ひいては事故内容の透明性を高めるのに役立つ。