アメリカでは現在、自動運転レベル2相当以上の先進運転支援システムおよび自動運転システム搭載車に対して、衝突事故を起こした後24時間以内の報告が義務付けられている。目的は「過去の経験」からもっと安全なクルマを作り、もっと安全にクルマを運転するため。その活動を統括している「特命部署NHTSA」からは、日本も学ぶべきことがありそうだ。

事故再現という手法がもたらす将来性と透明性

ことさら興味深いのは、NHTSAが公開しているレポートの中身だ。日本では従来から、事故調査というと目視や機器を使った計測による「損傷部位と度合いの特定」「現場検証」、そして「ドライバーおよび外部からの目撃証言」に基づいて情報が集められ、分析されてきた。最近はドライブレコーダーも事故検証に用いられることが多いというが、基本はアナログな作業が中心となる。

2022年8月15日までのデータを集積したレポートの一部。やや波はあるものの、ADS、ADASともに提出される件数は増加傾向にある。(出典:Standing General Order on Crash Reporting | NHTSA)

www.nhtsa.gov

一方NHTSAは、そうしたアナログ系作業に加えて、デジタルデータをもとにした解析にも積極的に取り組んでいる。具体的には,、EDR(イベントデータ・レコーダー)に残された情報が用いられることが多いようだ。

事故直前のドライバーの運転操作に加え、車両の走行状態、不具合の有無などを記録するEDRは、日本でも2022年7月から新型車への搭載が義務付けられている。しかし実際の事故解析での利活用は、まだごく一部に過ぎない。

損害保険会社の責任按分の決定や、刑事事件に発展するような重大事故でのドライバーの過失責任を問う中では、すでにその有用性が認められつつある。とはいえ一般の人に漫然と「EDRをもっと有効活用しましょう」と語ったところで、なかなかその必要性を理解してもらうのは難しいだろう。

それでも日本において、ADAS搭載が「フツー」な時代はすでに訪れている。ハンズオフ機能を使える車種も、次第に増えてきた。SAEレベル3を超える自動運転が実用化されるにあたっては、今までどおりの「見て、聴いて・・・」だけの事故解析では追いつかないことは確かだ。

画像: NHTSAが公開しているSCI(Special Crash Investigation:特別事故調査)のレポートの一部。関連した車両の台数が多いものでは数十ページにもわたって検証が加えられている場合がある。(出典:NHTSA) www.nhtsa.gov

NHTSAが公開しているSCI(Special Crash Investigation:特別事故調査)のレポートの一部。関連した車両の台数が多いものでは数十ページにもわたって検証が加えられている場合がある。(出典:NHTSA)

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EDRの活用に関しては法的な整備も含めて、日本のあらゆる関係機関が懸命に、北米や欧州のトレンドに追いつこうと努力している。同時に自動車事故の原因究明や解析についても、次世代車両が急増する実態に即した進化の方向性を模索している様子だ。

手っ取り早くNHTSAに学ぶとすれば、具体的には「その時、何が起こったのか」を正確に再現する姿勢だろう。そこで注目したいのが、そのものずばりな「Accident reconstruction=事故再現」という分析手法だ。アナログな手法とデジタルなデータ分析を駆使して、事故の素顔を明かすことができる。

従来の日本の調査方法が、どちらかと言えば「誰に責任があるのか」に注目しがちなのとは対照的に、その調査報告は極めて中立的で透明性が高い。民事、刑事に関わらず今後は日本でも訴訟の場面などで、「よりわかりやすい事故解析」として採り入れられる可能性が高いと思う。

「事故再現」については今後の本項で、より深く理解してもらえるような情報をお伝えしていくつもりだ。

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