通常のジェット燃料と同等の性能を発揮
SAFとはSustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)の略で、航空領域でのCO2排出量を削減し、カーボンニュートラルを達成する手段の1つとして注目されている。GE ホンダでは、このSAFを100%使用したHF120ターボファンエンジンの試験に成功したと、米国フロリダ州で開催されているビジネス航空ショー「ナショナル ビジネス アビエーション(NBAA)2022」で発表した。
SAFの利用は米国材料試験協会(ASTM)による認可制となっており、既存のジェット燃料へSAFを混合できる含有率の上限が定められている。現在の上限は50%となっているが、今回の試験により、今後の航空燃料の進化・普及を見据え、100%のSAFを使用できる可能性を確認することができた。
試験では、100% SAFをHF120で使用した場合のエンジン性能への影響を既存のジェット燃料と比較し評価した。SAFには、現在最も普及しているHEFA-SPK(動植物由来の油を水素化処理して合成される航空用燃料)を使用し、地上でのエンジン試験をGEの設備(米国オハイオ州ピーブルズ)にて数日間に渡り実施した。その結果、通常のジェット燃料を使用した場合と同等の性能が確認できた。
GEとホンダは、SAFの安全性を評価し規格化の支援を行う国際団体(FAA/OEM Review Panel)に加入しており、SAFの安全性と普及に向けて活動している。今後も両社で協力し、持続可能な社会に向けたCO2排出量の削減など技術を進化させ、業界をリードしていく。
ホンダ ジェットが「エリート II」にアップデート
今回の実験で使用された、HF120ターボファンエンジンを搭載する、ホンダ ジェットが最新型の「エリート II」にアップグレードされ、NBAA 2022で公開された。ホンダ ジェットは、ホンダの航空機事業子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(以下、HACI)が製造する小型ビジネスジェット機だ。
エリート IIでは、燃料タンクの拡張および最大離陸重量の増加により、航続距離を1547ノーティカルマイル(2865km)に延長(従来のホンダ ジェット エリートから+204km)し、より遠くの目的地へ移動することが可能になった。また、機体構造の改良においては着陸後の減速に使用するグランドスポイラーを主翼に初搭載し、着陸時の機体ハンドリングと安定性を向上している。
空の領域における新たな安全技術の取り組みとして、最新の自動化技術であるオートスロットル機能と緊急着陸装置を2023年末までに導入する。HACIはこれまで複数回に渡るアップグレードにおいて最新の安全機能をアビオニクス(電子機器)システムに搭載してきたが、この2つの自動化技術をエリート IIに導入することで、パイロットの負荷を軽減するとともに、機体運用の安全性をさらに向上させる。
エリート IIは機能美に着目し、究極のオーナーシップ体験と快適性を追求したモデルだ。外観デザインでは「ブラック エディション(特別色)」を新設定した。内装にはモダンなグレーを基調にした「スチール」と暖かみのあるベージュを基調にした「オニキス」の二つのデザインが加わり、また、機内通路の床材には従来のカーペットのほか、木目調のデザインを選択できるようになった。さらに、機内壁の遮音材を刷新し機内に流れ込む風切り音を抑える設計とするなど、ノイズ低減の工夫を施したことでキャビン全体の静粛性をさらに向上させている。