2009年11月、ホンダ シビックの欧州ハッチバック型「タイプR」の日本への限定輸入が始まった。2010台限定で開始されるもののたちまち完売となり、後に追加設定されることになるが、この「タイプR ユーロ」と名付けれた欧州製のシビック タイプRはどんなモデルだったのか。上陸後早々に行われた試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年1月号より)

日本のタイプRとはボディタイプも味付けも異なる

ホンダのグローバル戦略車であるシビックは日本と北米、欧州の市場ごとにボディタイプも分けて販売されている。日本での現行モデルは、2005年に登場した8代目となるが、国内ではフィットの存在もあり、先代まで続いたハッチバックはラインナップされず、セダンのみが販売、北米では日本のものとは異なるオリジナルデザインを持つセダンとそれをもとにしたクーペがラインナップされる。そして欧州は他の市場のシビックと違い、フィットと共通のプラットフォームを採用するハッチバックが販売されているのだ。

しかし、「欧州で出ている“シビックのハッチバック”が欲しい」という声が少なからずホンダには届いていたという。そこでホンダは、英国ホンダ製の欧州版シビックのトップグレードであるタイプRの輸入を決定した。それがこの、シビックタイプRユーロだ。「ユーロ」とつくのは、あくまで欧州版のタイプRであることを強調するためだ。サーキット走行をも念頭においた日本のタイプRとは、ボディタイプも異なればチューニングの味つけも違っている。

タイプRユーロとタイプRのサイズを比較すると、プラットフォームが異なっていることもあり、ボディタイプ以上の違いを感じる。ホイールベースはセダンより65mm短い2635mm、全長は270mmも短い4270mmだ。それでいて全幅は15mm広い1785mm、全高は45mm高い1445mmとなっている。

エクステリア全体の雰囲気も、前後のライトまわりの意匠や大型テールゲートスポイラーの存在による派手なタイプRユーロと、ストイックさを醸し出すタイプRとは大きな差がある。

インテリアに関しても、タイプRユーロは専用デザインとなっている。ただ、メーターが上にデジタル式スピードメーター、下にアナログ式のタコメーターの2段構えになっていることや、丸いアルミ製のシフトノブ、ブラックとレッド基調のインテリアカラーなどは共通だ。スピードメーターの脇に、エンジン回転の上昇を光の点灯で知らせて、エンジンのおいしいところを活かしたシフトチェンジを促す「i-VTEC/REVインジケーター」も同じく装備する。

搭載するエンジンは、型式はタイプRと同じ2L NAのK20A型で6速MTと組み合わされる。だが、最高出力は24psダウンの201ps、最大トルクは22Nmダウンの193Nmとなっている。絶対的な速さよりも、扱いやすさに重点を置いているのだ。

画像: リアスタイルは、大型テールゲートスポイラーとバンパー一体型のデュアルマフラーが目をひく。取材車のボディカラーはおなじみのチャンピオンシップホワイト。シビックタイプRユーロでは、その他にミラノレッドとアラバスターシルバーメタリックの2色があり、全3色から選択することができる。

リアスタイルは、大型テールゲートスポイラーとバンパー一体型のデュアルマフラーが目をひく。取材車のボディカラーはおなじみのチャンピオンシップホワイト。シビックタイプRユーロでは、その他にミラノレッドとアラバスターシルバーメタリックの2色があり、全3色から選択することができる。

どんな道でも気持ちよく走れる

そんなタイプRユーロに乗り込む。まず、最初に感じたのは、シートポジションが意外と高いということだ。これはシャシがフィットベースであり、センタータンクレイアウトであることによる影響とのこと。しかし、シートにはハイトアジャスターがあり、視界も広がるというメリットもあるので、すぐに慣れた。

試乗はワインディングロードで行った。ホンダのエンジンらしく、スムーズに回転数が上がる。5400rpmでVTECが高回転型へ切り替わると、ここからさらに胸のすくような加速が始まる。そしてこの時、エキゾーストノートも気持ちを高揚させるサウンドへと変わるのだ。

タイプRユーロは足まわりのセッティングもサーキット指向ではない。そのサスペンション形式はフロントはストラット式で、リアはプラットフォームの関係でダブルウイッシュボーン式ではなくトーションビーム式だ。ダンパーにはザックス製をホンダ車として初採用している。

実際、タイプRユーロは荒れた路面でも飛び跳ねるようなことはなく、しなやかさすら感じさせてくれた。そんな接地性の高さに加えて、ハンドル操作に対する応答性も高いので、自分の思い描いたライン通りにコーナーをクリアしていくことができた。

こうした乗り味以外にも、室内騒音を低減させるためにドアリップシールを加えるなど、タイプRユーロからは、サーキットというよりも、「どんな道でも気持ちよく走れること」を意識していることがよく伝わってきた。

タイプRユーロは、「2010年」にかけて、2010台の限定販売となる。(文:Motor Magazine編集部/写真:井上雅行)

画像: 内装色はブラック/タイプRレッドのコンビネーションカラーのみとなる。

内装色はブラック/タイプRレッドのコンビネーションカラーのみとなる。

ホンダ シビック タイプR ユーロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4270×1785×1445mm
●ホイールベース:2635mm
●車両重量:1320kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1998cc
●最高出力:148kW(201ps)/7800rpm
●最大トルク:193Nm/(19.7kgm)/5600rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:11.6km/L
●車両価格:298万円(2009年当時)

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