性能向上やラインナップ拡充など着々と進化を図るボルボのBEV。そのBEVの最新モデルであるXC40リチャージのライバルとも言える国も個性も異なるBEVモデル3台を乗り比べ、そのキャラクターの違いを探る。(Motor Magazine2022年12月号より)

個性の違うBEV3台それぞれの走りと特徴

EQBは、そんなモデル3と正反対のキャラクターに思えた。まずは発進時の反応が穏やかで、モデル3のように「いかにもBEV」といった風情を示すことがない。むしろ、できるだけエンジン車に近い感触を狙ったとさえ思えるほど。それでも520Nmの大トルクは伊達ではなく、車速の上昇に伴って加速感も強まっていくように感じられる。

画像: メルセデス EQ EQB 350 4マティック。エンジン車に近い走行フィールのEQB 350 4マティック。足まわりはソフト傾向だ。

メルセデス EQ EQB 350 4マティック。エンジン車に近い走行フィールのEQB 350 4マティック。足まわりはソフト傾向だ。

アクセルペダルのコントロール性も高く、ペダルから足を離すと絶妙な間合いをおいてから減速度が立ち上がり、車速の低下とともに回生ブレーキの利きが穏やかに強まっていく。これもまた、エンジン車から乗り換えてもほとんど違和感を覚えない点だろう。

乗り心地は全般的にソフト傾向。長めのサスペンションストロークを利用して、路面からのショックをゆったりと受け止めてくれるソフトな足まわりだ。

だが、コーナリング性能ではこれが災いする。足まわりがソフトなので必然的にロールは深く、その姿勢変化の大きさから一定以上のペースで走ると自然とアクセルペダルを緩めたくなる。ステアリングレスポンスも、モデル3に比べれば明らかに「おっとり」している。ただし、タイヤのグリップ限界に近づくと、緻密な制御のスタビリティコントロールがドライバーに気づかれないように作動し、安定した姿勢を保ってくれるので心配は無用だ。

全高が1705mmと高く、ボクシーなスタイリングのEQBはスペースユーティリティも高く、3台中、唯一3シートを装備して7名乗車を可能にしている。この辺がEQBのキャラクターを象徴しているともいえるだろう。

歴史ある自動車メーカーのBEV 作りのバランス感覚

XC40リチャージ ツインは、見事にこの2台の中間に位置している。いや、2台の長所を兼ね備えた仕上がりといったほうが正しいかもしれない。

画像: ボルボ XC40リチャージ アルティメット ツインモーター。PAで充電中のひとコマ。急速充電(CHAdeMO)に対応し、一充電航続距離484kmの走行が可能だ。

ボルボ XC40リチャージ アルティメット ツインモーター。PAで充電中のひとコマ。急速充電(CHAdeMO)に対応し、一充電航続距離484kmの走行が可能だ。

発進時は、EQBに似た穏やかさを残しつつ、その気になればモデル3並みのダッシュ力を発揮させることも可能。ペダル操作に対するモーターの出力変化が初期型C40 リチャージよりマイルドになったことも、XC40の美点だ。

一般道での乗り心地がデビュー当時のC40より大幅に洗練されたことも印象的だった。初期型C40に限らず、CMAプラットフォームを用いたボルボに共通の「足まわりが突っ張った」印象が薄れ、車重の軽さもあってか、力強い加速と軽快なハンドリングを実現する。

柔軟に路面に追従するようになったのだ。これが荒れた路面やワインディングロードでのロードホー
ルディング向上に役立つことはいうまでもない。

その一方で、ロールやピッチといった操縦性に大きくかかわるボディの動きはしっかり抑えてくれるので、ワインディングロードを走っていてもストレスを感じにくい。この辺の柔軟性としっかり感のバランスが、ライバルに対するXC40リチャー ジツインの最大の強みといっていいだろう。

さらにシングルモーターは軽快なキャラクターだが、ツインモーターと同様の装備を備え、100万円ほど低価格なのも魅力的である。

BEVであるからには、先進性を強調したいが、歴史ある自動車メーカーとしては、既存の顧客を戸惑わせるわけにもいかない。ボルボのBEV作りはこのバランス取りに苦心したのではないか。

そうしたなか、やや先進性に振れていた初期型C40に対し、XC40リチャージでは「ボルボBEVのあるべき姿」がようやく見つかったような気がする。XC40リチャージは、BEV作りに取り組む多くの自動車メーカーにとって示唆に富んだ製品といえそうだ。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

画像: 同じBEVでも個性が異なる3モデル。(左からボルボ XC40リチャージ、テスラ モデル3、メルセデス EQB)

同じBEVでも個性が異なる3モデル。(左からボルボ XC40リチャージ、テスラ モデル3、メルセデス EQB)

■テスラ モデル3 ロングレンジ主要諸元

●全長×全幅×全高:4694×1849×1443mm
●ホイールベース:2875mm
●車両重量:1850kg
●モーター:前・交流誘導電動機、後・交流同期電動機
●モーター最高出力:324kW(440ps)
●モーター最大トルク:493Nm
●バッテリー総電力量:-
●WLTCモード航続距離:689km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:235/45R18
●車両価格(税込):709万1000円

■メルセデス EQ EQB 350 4マティック主要諸元

●全長×全幅×全高:4685×1835×1705mm
●ホイールベース:2830mm
●車両重量:2160kg
●モーター:前・交流誘導電動機、後・交流同期電動機
●モーター最高出力:前143kW(194ps)/5800-7600rpm、後72kW(98ps)/4500-14100rpm
●モーター最大トルク:前370Nm/0-3600rpm、後150Nm/0-4500rpm
●バッテリー総電力量:66.5kWh
●WLTCモード航続距離:468km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:235/55R18
●車両価格(税込):906万円

■ボルボ XC40リチャージ アルティメット ツインモーター主要諸元

●全長×全幅×全高:4440×1875×1650mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:2150kg
●モーター:前・交流同期電動機、後・交流同期電動機
●モーター最高出力:前150kW(204ps)/4350-760013900rpm、後150kW(204ps)/4350-13900rpm
●モーター最大トルク:前330Nm/0-4350rpm、後330Nm/0-4350rpm
●バッテリー総電力量:78kWh
●WLTCモード航続距離:484km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:前235/45R20、後255/40R20
●車両価格(税込):679万円

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