ピットレーンは一面の雪だったが・・・
0→100km/h加速3.3秒という、スーパーカーと呼ぶに相応しいパフォーマンスを持つ、アストンマーティンのSUV、DBX707。これまで何度かそのハンドルを握り試乗しているが、その実力のすべてを解き放ち、体感するのは一般公道では無理であると感じていた。本格的なサーキットが必要である。
それはアストンマーティンも当然理解している。そこで今回、富士スピードウェイの本コースでテストドライブする機会が用意された。どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、当日まで指折り数えて楽しみにしていた。
しかし、天気予報は生憎の雪。それも大寒波の襲来ということで、サーキットランができるのかどうか半信半疑だった。
朝、起きて窓を開けると窓の外に見えるのは雪景色だった。これでは走るのは無理だ、と思いつつも富士スピードウェイに向かった。もしかしたらコース上は雪かきされているかも・・・と思いピットのシャッターを開けたが、一面の雪で覆われたピットレーンを見てさすがに走行はあきらめた。
それでもアストンマーティンの好意でオールシーズンタイヤ装着車を用意してもらい、少しだけではあるが、雪道を走ることが許された。まさしく災い転じて福となる。思いがけず、SUV界のスーパーカーでスノードライブを経験する絶好の機会となった。
恵みの雪が車体制御技術の優秀さを経験させてくれた
さて、707ps、900Nmというハイパワー&大トルクは、雪道のような滑りやすい路面では、とてもではないがまともに走れるわけがない、というのは勝手な思い込みでしかなかった。実際にハンドルを握ると、車両安定デバイスの効果もあり、「走りを楽しむ」ことが存分にできたのである。
これはどういうことかもう少し詳しく書くと、車体の滑り出しが文字どおり、手に取るように伝わってくるため、それにカウンターステアで対処し、車両の姿勢を立て直すことができ、安心してアクセルペダルを踏んでいけるということである。
走る速度は、もちろんサーキットスピードというわけではなく、タイヤの限界を超えない低い速度ではあるが、それでも四輪制御技術の素晴らしさが確認できたということでは、「恵みの雪」と言ってもいいかもしれない。
今回は、サーキット走行が叶わず、公道では確認できない速度域の性能こそ味わえなかったが、それでもこの時期しか体験できない、DBX707の別の顔を見ることができた。SUV界のスーパーカーは二刀流だった。