スズキの軽乗用車、アルトのベーシックグレードである「A」に試乗する機会を得た。装備はシンプルで、車両価格は税込みで95万円もしないモデルだが、乗ってみると単なる安っぽいクルマではなく、クルマの原点の思い起こさせてくれた。

走りっぷりには、まったく不満はない

画像: 今回、約120km(3分の2くらい高速クルージング、残りは市街地走行)の試乗で、平均燃費は29.6km/Lを記録した。

今回、約120km(3分の2くらい高速クルージング、残りは市街地走行)の試乗で、平均燃費は29.6km/Lを記録した。

前置きが長くなってしまった。キーのリモコンでロックを解除して、キーシリンダーにキーを差し込み、キーを捻ってエンジンを始動する。思えば、最近のクルマはスマートキーがほとんどだから、この一連の操作が懐かしくて新鮮で、でもクルマを始動させるという「儀式」がいい。

ノンターボの46psエンジンにCVTという組み合わせだから、走りには期待していなかった。だが、700kgを切る軽量ボディが奏功して、走りはきわめて軽快! 発進こそCVT独特の感触でスパッとはいかないけれど、市街地でも高速道路でも、その走りっぷりに不満はない。軽量ボディながら、HEARTECTのプラットフォームや環状骨格構造のボディのおかげで、けっこう剛性が高い。加速時などでエンジン回転数が上がると少しノイジーになるが、高速走行でも助手席のパッセンジャーとは普通に会話できる。

減速時のエネルギーを利用して充電するエネチャージやアイドリングストップ機能のおかげで燃費は良い。今回、約120kmの走行は3分の2くらいが高速クルージングで、残りは市街地走行や撮影のための移動といった感じだったが、平均燃費計の数値は29.6km/L! WLTCモードの25.2km/Lを大きく上回る数値を示した。もちろんエアコンは入れっぱなし。流れに乗った走りで、とくにエコランはしていない。高速クルージングが多かったとはいえ、街中走り中心で普通に乗っても燃費はおそらく20km/Lを切ることはないように思われる。

シート地もビニールレザーなんかじゃないし、シンプルだけど安っぽさは感じさせない。安全装備を含めて必要なものは揃っている。現行型のアルトが登場したとき、上級グレードに試乗して「これこそがベーシックカーの基本」と思ったけれど、このアルト Aこそが、まさにベーシックカーの基本だった。豪華装備に慣れてしまった人も、一度このアルト Aに乗ってみるといい。必要最低限なものしかなくても、基本性能がしっかりしていれば、クルマって乗って走って楽しいものなんだと再認識できるに違いない。(写真:井上雅行)

画像: シンプルだが安っぽさは感じさせないインテリア。センターダッシュ上のディスプレイオーディオはオプション。

シンプルだが安っぽさは感じさせないインテリア。センターダッシュ上のディスプレイオーディオはオプション。

スズキ アルト A 主要諸元

●全長×全幅×全高:3395×1475×1525mm
●ホイールベース:2460mm
●車両重量:680kg
●エンジン:直3 DOHC
●総排気量:658cc
●最高出力:34kW(46ps)/6500rpm
●最大トルク:55Nm(5.6kgm)/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・27L
●WLTCモード燃費:25.2km/L
●タイヤサイズ:155/65R14
●車両価格(税込):94万3800円

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