1970年代の後半に大ブームが起き、今もなお人々を魅了してやまないスーパーカーたち。そんな懐かしいモデルから現代のハイパースポーツまでを紹介していく、スーパーカークロニクル。今回は、デ・ドマソ パンテーラだ。

デ・トマソ パンテーラ(DE TOMASO PANTERA:1971-1992)

画像: 荒々しくも力強さを感じさせるデザイン。当時のスーパーカーのお約束であるリトラクタブル式ヘッドランプも採用。

荒々しくも力強さを感じさせるデザイン。当時のスーパーカーのお約束であるリトラクタブル式ヘッドランプも採用。

1966年に、後述するマングスタをトリノ ショーで発表して、一躍スーパーカー メーカーの仲間入りを果たしたデ・トマソが、アメリカのフォードと手を組み開発したのが1971年に登場したパンテーラだ。大量生産でコストダウンを狙ったスーパーカーというコンセプトは、世界初のものだった。車名はイタリア語のヒョウ(パンサー)に由来する。

ランボルギーニから移籍したジャンパオロ・ダラーラが設計した基本骨格は、当時バックボーンフレームが主流だったスーパーカーとしては異例ともいえるモノコック構造で、フォード製の5.8L V8・OHVを縦置きミッドシップ搭載している。ボディデザインはカロッツェリア・ギアに在籍していたトム・ジャーダで、全高わずか1100mmのウエッジシェイプに仕上げた。生産性にまで配慮したスタイルはイタリアンデザインの繊細さには欠けるが、その荒々しさが力強さに感じられるのは、優れたデザインによるものだろう。

ただし、リアのエンジンフードを開けても2列に並んだ美しいカムカバーは見えない。そこには、バンク中央に置かれた4バレル ダウンドラフト キャブレターのエアクリーナーと、何の変哲もないOHVエンジン、そしてZF製の5速MTが鎮座しているだけだ。

画像: フォード製の5.8L V8は44.0kgmのビッグトルクが自慢。加速感は強烈だが、大味な印象だった。

フォード製の5.8L V8は44.0kgmのビッグトルクが自慢。加速感は強烈だが、大味な印象だった。

しかし、フォード製の351CDIユニットは300psの最高出力を5400rpmで発生する低回転型ゆえに、メンテナンスフリーで所定の性能を発揮する。これがマルチキャブで神経質なイタリアンスーパーカーとの決定的な差だ。しかも44.0kgmのビッグトルクをわずか3500rpmで発生したから、低速域での扱いやすさはこの種のクルマとしては抜群で、スーパーカーのイメージを覆す低速性能も発揮した。

フェラーリのほぼ半額で公称最高速度260km/hの性能が手に入る、となれば人気が高まるのは当然だ。1972年には3000台に迫る販売実績を残している。1973年にはハイパフォーマンスモデルのGTSが追加された。350ps/50.1kgmまでチューンされ、最高速も280km/hに上がった。

パンテーラは第1次のスーパーカーブームが去ったあとも生き長らえ、第二黄金期となった1990年のトリノ ショーでビッグマイナーチェンジされたモデルも登場し、小規模ながらも生産が続けられた。

デ・トマソ パンテーラGTS 主要諸元

●全長×全幅×全高:4270×1830×1100mm
●ホイールベース:2515mm
●車両重量:1420kg
●エンジン種類:90度V8 OHV
●総排気量:5763cc
●最高出力:350ps/6000rpm
●最大トルク:50.1kgm/4000rpm
●燃料:有鉛ハイオク
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:前185VR15、後205VR15

パンテーラの前身「マングスタ(MANGUSTA)」

画像: デザインは、当時カロッツェリア ギアに在籍していたジョルジェット・ジウジアーロ。ロー&ワイドで、いかにもスーパーカー的なスタイリングだ。

デザインは、当時カロッツェリア ギアに在籍していたジョルジェット・ジウジアーロ。ロー&ワイドで、いかにもスーパーカー的なスタイリングだ。

デ・トマソが、バレルンガに続き、2作目の市販車として発表したのが、マングスタだ。その名はイタリア語でマングースを意味する。1966年のトリノ モーターショーで市販プロトタイプが展示され、翌年から生産が開始された。

シャシはバックボーンフレームと前後のサブメンバーから構成される。パワーユニットはフォード製の4.7L V8で、OHVながら305psと56.8kgmを発生し、1185kgのボディを250km/hの最高速度まで引っ張った。アメリカンV8エンジンを搭載したことでマングスタはライバルより安い価格が設定でき、しかもエンジンは扱いやすくメンテナンス性も優れていた。1971年の生産終了までに、約400台が生産された。

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