スーパーフォーミュラは環境が整い過ぎている?
FIA F2をはじめとするヨーロッパを中心に行われているカテゴリーは日本のレースに比べ、グリップ力が低いタイヤを採用している。(意図的にグリップ力を下げている)
また、ヨーロッパでは普段公道として使われている市街地サーキットをはじめとして、日本に比べると路面が整備されていないサーキットでレースが行われていたりと、ドライバー達は常にタイヤに気を配る環境の中でレースを戦っている。
こういった厳しい環境での経験がグリップが少ない路面でも速く走るテクニックや、ある程度のスピードを維持しつつもタイヤを攻撃しない技術を身につけさせている。
熱が入っておらずグリップしないタイヤでも速く走ることができ、アンダーカットを成功させたローソンの走りはまさにヨーロッパで戦ってきた経験によるものだろう。
日本では整備の行き届いたサーキットで、路面状況も素晴らしい中でレースが開催されている。さらにさまざまなタイヤメーカーが参入し、日々タイヤの性能が高まっており、強烈なグリップ性能を発揮している。(タイヤメーカーが複数参戦しているのはSUPER GT)。こういった環境で育った日本人ドライバーはグリップを引き出すのがうまく、速いラップタイムを刻むのに長けている。
しかし今回勝負を分けたポイントは、グリップがない状態での走りの差であり、この差は日本と海外のレース環境の差にある。グリップを引き出し速く走るのはドライバーにとって1番大切なことだが、今回のように環境に適応する「引き出しの多さ」もまたレースをする上で重要な要素と言えるのではないだろうか。
第2戦はペナルティもあり、表彰台に乗ることができなかったローソンだが、レース中は終始ライバル勢の動きを見ながら周回を重ねていた。前方2台がやり合っていれば少し距離を保ち、勝機と見るや必ずチャンスをものにしてみせた。
初めてのコースが続く「不利」を乗り越え、経験値を積み重ね、強くなる
特に山下健太(KONDO RACING)とのバトルではローソンのレース知能の高さがうかがえた。21周目、4位争いを行っていた大湯都史樹(TGM Grand Prix)と山下の後ろ、6番手にいたローソン。大湯と山下はOTS(オーバーテイクシステム)を使いながらバトルを繰り広げ1コーナーへ。1コーナー立ち上がりで山下が姿勢を乱しタイムロス。その隙にローソンが仕掛けるもコカコーラコーナーでアウト側にいたローソンは山下を抜くことができなかった。
しかしギャップを詰め、次のホームストレートで確実に山下を抜きギャップを広げていったのだ。相手が挙動を乱した時に、無理に仕掛けるのではなくオーバーテイクしやすいホームストレートまで待って確実に仕留めたローソン。前の周で大湯をパスするためにOTSを使っていた山下は次のホームストレートでOTSが使えない。(200秒間を自由に使い分けることができるが、一度使ってしまうとインターバル[今回は120秒]の時間が設けられ、その間OTSが使えない)
自分がOTSを使いリスクを犯すことなく確実に仕留めたのはローソンの冷静な判断によるものだ。コースを熟知したライバル達に対して圧倒的不利な状況の中、見事デビューウィンを達成し、第2戦でもレースIQの高さをみせてくれたローソン。ポイントランキングでは野尻につぐ2位につけているが、それでもシリーズチャンピオンを狙うとなるとやや厳しい状況と言わざるを得ない。
スーパーフォーミュラでは予選1位から3位までにポイントが与えられる。(1位3ポイント。2位2ポイント、3位1ポイント授与)開幕2戦ともにポールポジションを獲得した野尻は予選だけで6ポイントを稼いでおり、未経験のサーキットが続くローソンにとっては予選ごとにポイント差を広げられてしまう可能性が大きいからだ。
しかし続く第3戦(2023年4月22日〜4月23日)は、唯一テストで走行経験のある鈴鹿サーキットが舞台である。開幕戦で凄まじい適応能力を見せたローソンなだけに、国内勢は早くも鈴鹿ラウンドが正念場となるだろう。シーズン開幕直後だが、目が離せないレースが続く。(写真提供:井上雅行/日本レースプロモーション)