時代が変われば、カッコ良さの基準も変わるものだと考える人は多いだろうが、しかし果たして本当にそうなのだろうか。たぶん、違うはずだ。2ドアのスポーツカー、クーペモデルやオープンモデルなどを時代錯誤の存在だろうと思ってしまうことこそが、ただ時代に流されているという証なのではないか。愛でる気持ちさえ忘れなければ、2ドア車の備える魅力を実感できるはずだ。(Motor Magazine 2023年4月号より)

英国本流のオープン2シーターこの時代性こそがFタイプ

Fタイプは、Rダイナミックブラックコンバーチブル450という現在はラインナップされていないグレード(最新では「コンバーチブル」の仕様が近い)。さほど熟考を重ねたとは思えないそのネーミングに、モデル末期でしかも未来への継承が閉ざされたモデルの悲哀が感じられてしまう。

画像: それぞれの事実が、独特の価値観を与えずにはいられない。左からメルセデスAMG SL43(BSG搭載モデル)、ジャガー Fタイプ Rダイナミック ブラック コンバーチブル P450。

それぞれの事実が、独特の価値観を与えずにはいられない。左からメルセデスAMG SL43(BSG搭載モデル)、ジャガー Fタイプ Rダイナミック ブラック コンバーチブル P450。

とは言え、クルマそのものに罪はない。久しぶりに駆った5L V8スーパーチャージドエンジン搭載のFタイプは、これぞ英国の本流オープン2シーターであると改めて感動した。10年前に登場した時からそうだったが、Fタイプはどのエンジン(かつては8気筒、6気筒、4気筒と揃っていた)に乗っても、昔から良いFRスポーツカーの典型だった。

ただし、純粋なガソリンエンジンならではのクラシックなフィールと雄叫びを別にしても、SL43に比べると、ひと世代前の時代性を感じずにはいられない。逆に言うと、それがFタイプの個性だ。

SL43がほとんど仕組みの理解が不能なまでに完璧なスポーツドライブを演出するのに対して、Fタイプにはハッキリと人間が介入する余地があった。それを、V8エンジンが大いにけしかけてくれる。これぞ、今のうちに乗っておきたいスポーツカーの11台であることは間違いない。自分がカッコ良いかどうかは、別にして。(文:西川 淳/写真:永元秀和、井上雅行)

メルセデスAMG SL43(BSG搭載モデル)主要諸元

●全長×全幅×全高:4700×1915×1370mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1780kg
●エンジン:直4DOHC電動排気ターボ+モーター
●総排気量:1991cc
●最高出力:280kW(381ps)/6750rpm
●最大トルク:480Nm/3250-5000rpm
●モーター最高出力:10kW(140ps)
●モーター最大トルク:58Nm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●WLTCモード燃費:10.8km/L
●タイヤサイズ:前265/40R20、後295/35R20
●車両価格(税込):1648万円

ジャガーFタイプ Rダイナミック ブラックコンバーチブル P450主要諸元

●全長×全幅×全高:4470×1925×1310mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1870kg
●エンジン:V8DOHCスーパーチャージャー
●総排気量:4999cc
●最高出力:331kW(450ps)/6000-6600rpm
●最大トルク:580Nm/2500-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●WLTCモード燃費:9.2km/L
●タイヤサイズ:前255/35R20、後295/30R20
●車両価格(税込):1696万円

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