歴代のクルマづくりの哲学が感じられるフェアレディZ
優れた動力性能を筆頭に、高い走りのパフォーマンスを売り物とする4ドアモデルも珍しいものではなくなっている昨今。そこにスタイリングの自由度の高さという評価項目を加味した場合、俄然高い優位性をアピールするのはやはり、2ドアもしくはそれをベースにテールゲートを加えた3ドアと称するモデルだろう。
新型フェアレディZに、軽快な走りにはもはや定評あるアルピーヌA110、そして誕生以来の歴史が半世紀を優に超えるアメリカを代表するスポーツ2ドアモデルであるカマロと、そんな3台を並べても、スタイリングはまさに3者3様の異なるスタンスだ。
日本を代表する最新モデルの『フェアレディZ』にまずスポットライトを当てると、ヒット作となった初代モデルを彷彿とさせる内外装のデザイン要素を巧みに取り入れつつ、現代風の解釈も入れ込んだ高いデザイン力に感心させられる。
歴代モデルと同様に長さが強調されたフロントフード下に搭載されるのは、2基のターボチャージャーが与えられ、405psの最高出力と475Nmの最大トルクという歴代最強のスペックを誇る3L V型6気筒ユニット。駆動は後輪ですなわちFRレイアウトという点も初代から続くこのモデルならではのヘリテージ。スタイリングとともに歴代Zに筋の通ったクルマづくりのフィロソフィが流れ続けていることを印象付ける、強い記号性のひとつとなっていることは間違いない。
カマロはいかにもアメリカ発のモデルらしい、まったく異なるキャラクターの持ち主。初代以来「4シータークーペ」をベースとしたクルマづくりを継承する一方で、歴代モデルのボディサイズがその時々の時代背景を踏まえながら増減を繰り返しているのは興味深い。
アメリカンスポーツの魂と言えそうな大排気量の自然吸気OHV式V8エンジン搭載モデルを常にイメージリーダーとして設定する点もアメリカ車らしいが、最新モデルには2Lのターボ付きDOHC4気筒ユニットをラインナップに加えるのも、またアメリカらしい割り切りの良さだろう。
全米最大のマーケットであるカリフォルニアが「オープンカー天国」であることを踏まえてか、「Tバールーフ」で代替された2代目を除き歴代すべてにフルオープンボディが設定されていることも特徴だ。本国で現行6代目が登場したのは2015年にまで遡るが、その後フェイスリフトやテレマティクスシステムのアップデートなどのリファインを敢行。クーペボディにのみ用意をされる、V8エンジン搭載の『SS』グレードでテストドライブを行った。
ラグジュアリー志向、ピュアスポーツ志向など様々な顔
こうしたFRレイアウトの2モデルに対し、パワーユニットをリアミッドにマウントするのがアルピーヌA110だ。
往年の同名モデルをオマージュしつつ、エクステリアにその雰囲気を巧みに表現しながらリアエンジンの2+2シーターからミッドシップの完全2シーター、FRPボディからアルミボディ、自然吸気エンジンからターボ付きエンジン等々とハードウェアを完全に新開発し、見事に現代の基準へとアップデートさせた手法は独特。
そんな現行A110のデビューは2017年で2021年にはマイナーチェンジを実施。現在日本で販売されているのは、シート背後にマウントされる1.8Lのターボ付き直噴4気筒エンジンが発する最高出力が従来の252psから300psへと一気にアップされ(ベースグレード用を除く)、最大トルクも320Nmから340Nmへと20Nmの上乗せされるなど心臓部の強化が図られ、インフォテインメントシステムのアップデートも行われたもの。
同時に、ベースグレードに対してインテリアによりゴージャスな仕立てを採用するなど名称どおりグランドツーリングを志向した『GT』や、サーキット走行までを意識し、より「走り」への志向が強い『S』が設定されるなどグレード体系の見直しも行われ、今回は他の2モデルとの対比もあって『GT』でのテストドライブを行っている。