快走ヌーヴィルに悪夢、弔い合戦で勝利を逸す
今季初勝利に向けて首位を堅持していたティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデ)が土曜午前中のアクシデントで涙を呑んだ。
ヒョンデにとってこの1戦は、4月13日にこのラリーの事前テスト中に事故死したクレイグ・ブリーンを追悼するイベント。ヌーヴィルはスタートからマシンのフィーリングはいまひとつと言いながらも、ブリーンの母国アイルランドの国旗色を使ったスペシャルカラーリングが施されたヒョンデi20Nを巧みに操り、ラリー序盤から主導権を握り続けた。
ライバルたちが次々とトラブルに見舞われて大きくタイムロスしていたことからこのまま勝利は確実かと思われたが、SS11半ばの5.5km地点でブレーキをやや遅らせすぎてタイヤをロック。リアがスライドしたi20Nはコンクリートブロックに激突してスピン、そのまま今度はフロントが立ち木に激突しストップした。
ここでデイリタイアとなったヌーヴィルは、「こんなことが起きるのがラリーというものだけど、今回はチームのためにも勝ちたかったからがっかりだ」と肩を落とした。
最悪の展開からトヨタ復活、エバンスがシーズン初勝利
ブリーンが急逝したことで2台のみのマニュファクチュアラーズ選手権ノミネートとなったヒョンデに対してアドバンテージを得るわけにはいかないと、自主的にマニュファクチュアラーズ選手権ノミネートを2台に減らしたトヨタ。
しかしラリー序盤のSS2でノミネート対象のセバスチャン・オジェとカッレ・ロバンペラが、まったく同じバンプでホイールを割ってステージ中にタイヤ交換を余儀なくされるという苦しい出だしになってしまう。
それでも今回ノミネートを外れたエバンスにはツキがあった。ヌーヴィルの脱落で首位に立ったのに続いて、背後から追い上げムードだったタナックも土曜午後に油圧系のトラブルに見舞われてペースダウン。大量リードに守られて日曜日も無難に走り切った。
2021年のラリー・フィンランド以来となる勝利となったエバンスは、「ずっとラリーに集中してきたけど、フィニッシュラインを横切った瞬間に友のことが頭に浮かんできた。僕らが繰り広げた戦いが、わずかでも彼の家族の慰めになったとしたら幸いだ」と静かに語り、“ゴッド・セイブ・ザ・クイーン”と“君が代”ではなく、アイルランド国歌が流れる表彰台の頂点にアイルランド国旗を抱えて立った。
次戦第5戦ラリー・ポルトガルは5月11~14日、古都ポルト近郊のマトショニスを起点に開催される。ラリー・ポルトガルは今シーズン2回目のグラベル(未舗装路)ラリーとなる。
2023年 WRC第4戦ラリー・クロアチア 結果
1位:E.エバンス(トヨタ GRヤリス ラリー1)2h50m54.3s
2位:O.タナック(フォード プーマ ラリー1)+27.0s
3位:E.ラッピ(ヒョンデ i20 N ラリー1)+58.6s
4位:K.ロバンペラ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+1m18.3s
5位:S.オジェ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+1m28.0s
6位:勝田貴元(トヨタ GRヤリス ラリー1)+2m22.5s
7位:P.ルーベ(フォード プーマ ラリー1)+4m22.6
8位:Y.ロッセル(シトロエン C3 ラリー2))+7m51.3s
9位:N.グライジン(シュコダ ファビアRS ラリー2)+8m07.4s
10位:O.ソルベルグ(シュコダ ファビアRS ラリー2)+9m16.7s
2023年 WRCドライバーズランキング(第4戦終了時)
1位 S.オジェ(トヨタ)69
2位 E.エバンス(トヨタ)69
3位 K.ロバンペラ(トヨタ) 68
4位 O.タナック(Mスポーツ フォード)65
5位 T.ヌーヴィル(ヒョンデ)58
6位 E.ラッピ(ヒョンデ)31
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8位 勝田貴元(トヨタ)18
2023年 WRCマニュファクチャラーズランキング(第4戦終了時)
1位 トヨタ 161
2位 ヒョンデ 132
3位 Mスポーツ フォード 108