メルセデスのスーパーカーらしく、特殊なクセはない
風でドアを持っていかれる心配もなく、雨にも濡れにくい。おまけにこのガルウイング式ドアは、ランボルギーニ アヴェンタドールなどのシザーズ式ドアとは違い、真下に引き下ろすタイプなので、小柄な人でも乗り込みながら閉められる。実用性とデザイン性が見事にマッチしていた。このあたりはメルセデス・ベンツらしい、高級実用車としての真骨頂なのではないだろうか。などと言ったら大げさに思われるかもしれないが、実際SLSのすごいポイントは、2500万円近い車両価格のスーパーカーだというのに、特殊なクセがほとんどなく普通に使えるところにある。
わずか3.8秒で100km/hに到達するという、とんでもないパワーの持ち主ではあるものの、7速DCTのシフトスケジュールは4段階、ダンパーの硬さは3段階(オプション)で変えられるから、万人向けの機能を備えたジェントルなスポーツカーでもある。
さて、試乗日は超悪天候だったから、シフトスケジュールは当然「C(燃費優先モード)」を選ぶ。それでも足まわりは中間モードの「S」くらいがいい。天気のいい日でも、シフトスケジュールは「S(スポーツモード)」で足まわりは「S」を選びたい。つまり、あまりコンフォートに設定すると、かえってバランスが悪い。これはやはり、ボディ剛性を高めたら乗り込みにくくなったので、苦肉の策でガルウイング式ドアを採用したという300SLの血を受け継いでいるのかもしれない。
リジッドに結合されたトランスアクスル レイアウトのおかげか、メカニカルノイズなども大きめだし、オプションのカーボンブレーキは踏みはじめから効きがけっこう強い。やはりメルセデスとはいえスポーツカーの血が濃いようで、ラグジュアリーという雰囲気とは少し縁遠くなっているかなとは思わせた。
とはいえ、操作系なども普通のメルセデスとほとんど変わらないし、SLSは予算さえ許せば誰もが安心して乗れる気軽(?)なスーパーカーだ。乗り降りに気を遣う狭い都会でこそ、暮らしやすい1台かもしれない。
メルセデス・ベンツ SLS AMG クーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4640×1940×1265mm
●ホイールベース:2680mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:V8 DOHC
●総排気量:6208cc
●最高出力:420kW(571ps)/6800rpm
●最大トルク:650Nm(66.3kgm)/4750rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:トランスアクスルFR
●燃料・タンク容量:プレミアム・85L
●EU総合燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:前265/35ZR19、後295/30ZR20
●当時の車両価格(税込):2490万円