「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、メルセデス・ベンツ SLS AMG クーペだ。

メルセデスのスーパーカーらしく、特殊なクセはない

風でドアを持っていかれる心配もなく、雨にも濡れにくい。おまけにこのガルウイング式ドアは、ランボルギーニ アヴェンタドールなどのシザーズ式ドアとは違い、真下に引き下ろすタイプなので、小柄な人でも乗り込みながら閉められる。実用性とデザイン性が見事にマッチしていた。このあたりはメルセデス・ベンツらしい、高級実用車としての真骨頂なのではないだろうか。などと言ったら大げさに思われるかもしれないが、実際SLSのすごいポイントは、2500万円近い車両価格のスーパーカーだというのに、特殊なクセがほとんどなく普通に使えるところにある。

わずか3.8秒で100km/hに到達するという、とんでもないパワーの持ち主ではあるものの、7速DCTのシフトスケジュールは4段階、ダンパーの硬さは3段階(オプション)で変えられるから、万人向けの機能を備えたジェントルなスポーツカーでもある。

画像: 長大なエンジンルームの後半分に収まる6.2LのV8は、420psと650Nmを発揮する。そのサウンドはアメリカンV8にも似ている。

長大なエンジンルームの後半分に収まる6.2LのV8は、420psと650Nmを発揮する。そのサウンドはアメリカンV8にも似ている。

さて、試乗日は超悪天候だったから、シフトスケジュールは当然「C(燃費優先モード)」を選ぶ。それでも足まわりは中間モードの「S」くらいがいい。天気のいい日でも、シフトスケジュールは「S(スポーツモード)」で足まわりは「S」を選びたい。つまり、あまりコンフォートに設定すると、かえってバランスが悪い。これはやはり、ボディ剛性を高めたら乗り込みにくくなったので、苦肉の策でガルウイング式ドアを採用したという300SLの血を受け継いでいるのかもしれない。

リジッドに結合されたトランスアクスル レイアウトのおかげか、メカニカルノイズなども大きめだし、オプションのカーボンブレーキは踏みはじめから効きがけっこう強い。やはりメルセデスとはいえスポーツカーの血が濃いようで、ラグジュアリーという雰囲気とは少し縁遠くなっているかなとは思わせた。

とはいえ、操作系なども普通のメルセデスとほとんど変わらないし、SLSは予算さえ許せば誰もが安心して乗れる気軽(?)なスーパーカーだ。乗り降りに気を遣う狭い都会でこそ、暮らしやすい1台かもしれない。

画像: 往年の名車、300SLを彷彿とさせるスタイリング。ガルウイング式ドアのハンドルはドアロックを解除すると出てくる。

往年の名車、300SLを彷彿とさせるスタイリング。ガルウイング式ドアのハンドルはドアロックを解除すると出てくる。

メルセデス・ベンツ SLS AMG クーペ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4640×1940×1265mm
●ホイールベース:2680mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:V8 DOHC
●総排気量:6208cc
●最高出力:420kW(571ps)/6800rpm
●最大トルク:650Nm(66.3kgm)/4750rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:トランスアクスルFR
●燃料・タンク容量:プレミアム・85L
●EU総合燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:前265/35ZR19、後295/30ZR20
●当時の車両価格(税込):2490万円

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