日本にファンもオーナーも多いルノー カングーがフルモデルチェンジして新型になった。どう進化したのか、気になる人も多いことだろう。ここではそんな新型カングーとその競合モデルとなるプジョー リフター、そしてシトロエン ベルランゴを同時に連れ出し、それぞれの持つ魅力を探るロングドライブに出かけた。(Motor Magazine 2023年6月号より)

ミニバンとして使うこともできるのがベルランゴの魅力

続いて、ちょっとポップでユーモラスなデザインのベルランゴ。左右を貫通する2本線のダブルシェブロンや、サイドの樹脂製モール、荷室の明かりとりを兼ねている7角形の窓ガラスなど、シトロエンワールド全開だ。

画像: シトロエン ベルランゴ。スライドドアがリアセクション後端まで届く。リアドアは跳ね上げるタイプで日よけ雨よけに使える大きさだ。

シトロエン ベルランゴ。スライドドアがリアセクション後端まで届く。リアドアは跳ね上げるタイプで日よけ雨よけに使える大きさだ。

インテリアは、よく見ればメーターナセルがマーブル模様だったり、グローブボックスに革ベルトがあしらわれていたり、遊び心にときめく空間。でも本当にときめくのは、ふと天井を見上げた時だろう。ルーフ全体に広がるマルチパノラミックルーフ「MODUTOP」の独創的なことといったら。

その中央を貫通するフローティングアーチは収納も兼ねており、上着やポーチなど軽めのものをポイポイ放り込むのにちょうどいい。後席の後ろにも大きなシーリングボックスが吊り下がり、荷室側からも手が入るアイデアもの。またその気になれば、チャイルドシートを使う子育て世代の必須機能となる、前席から後席への移動も可能だ。また市街地でも扱いやすく、ちゃんとミニバンとして使えるのがいい。

画像: ハンドルの大きさやメーター類がレイアウトされる高さなどの他は、基本的にベルランゴのデザインはリフターと同じである。

ハンドルの大きさやメーター類がレイアウトされる高さなどの他は、基本的にベルランゴのデザインはリフターと同じである。

荷室容量は597Lだが、最大2126Lに拡大する。リアガラスだけが開閉できる便利さは、駐車場の狭い日本では優位かもしれない。

先進的なダイヤル式のシフト操作は、リフターと共通。1.5Lのディーゼルターボに8速ATを組み合わせたパワートレーンは、低速でのカジュアル感のある加速フィールから一変、中速域以上になると300Nmの太いトルクを存分に引き出す余裕たっぷりの走りになる。ちょっとしたカーブやギャップでも、ねっとりと路面に粘るような乗り味で、往年のフランス車に通じる魅力がある︒

3列目シートを取り外せば親子3人川の字で車中泊OK

最後に、3列シート7人乗りのリフター ロング。デザインはモダンなプジョーらしいテイストに仕上がっている。牙や爪のモチーフがないので物足りないかと思いきや、標準ボディより355mm長く背が高いので、とくに横から見ると迫力がすごい。

画像: プジョー リフター ロング。ベルランゴと比べるとスライドドアの位置が違うのがよくわかる。その分、ホイールベースが長くなる。

プジョー リフター ロング。ベルランゴと比べるとスライドドアの位置が違うのがよくわかる。その分、ホイールベースが長くなる。

インテリアもまったく別世界で、独自のiコックピットとやや抱え込むように小径ハンドルを握る感覚は、プジョーのお約束ポジション。収納スペースは多いが、リッドで隠すなど3モデルで一番上質な仕上がりだと感じる。

3座独立の2列目シートは頭上のゆとりがアップするのがベルランゴとの違い。3列目シートは左右独立式で、頭上が拳2.5個の余裕、足もとは前後スライド機構で拳1個から3.5個まで調整できた。左右にドリンクホルダーもあり、これなら日常的に十分使えるが、2列目にチャイルドシートを装着すると3列目へのアクセスが大変なので、子どもが小学生以上のファミリーにオススメだ。

荷室は通常の容量が209L。3列目のシートは取り外し式だが、重いし置き場所にも困る、という場合は前に倒すこともできる。でも2列目がせっかくフラットになり、最大2693Lに拡大するので、やはり大荷物を積みたい時には取り外した方がスッキリする。そこには広い空間が現れ、これなら流行りの車中泊も、夫婦+子どもの3人川の字でイケるかもしれない。

画像: リフターロングの3列目シートは最大130mmの前後スライド量を持つ。内装素材とカラーはファブリックツートン。

リフターロングの3列目シートは最大130mmの前後スライド量を持つ。内装素材とカラーはファブリックツートン。

パワートレーンは1.5Lのディーゼルターボ+8速AT。標準車より重くなった分、発進直後がやや穏やかだが、その後は力強い加速がしっかりと続く。むしろ、どっしり感があって落ち着いた挙動と乗り心地を手に入れ、走りにも上質感がプラスされたよう。高速道路での剛性感も高く、少しドイツ車に近いフィーリングがリフターロングの持ち味だ。

こうして3モデルに代わるがわる触れてみると、デザインも使い勝手も三者三様ながら、共通していたのが﹁使い方を押し付けない﹂自由さと、少しだけ手間ひまがかかることによる、クルマとのコミュニケーションだ。

なんでも一方的に与えられることに慣れてしまうと、だんだん心は枯れていく。でも、自分からも手をかけなきゃ、楽しいことを見つけなきゃ、と思えば好奇心と興味が湧いてくる。きっとクルマがマルチプレーヤーというよりは、乗る人をマルチプレーヤーにする才能があるのが、フレンチおしゃれMPVだ。(文:まるも亜希子/写真:永元秀和)

ルノー カングー クレアティフ(ディーゼル)主要諸元

●全長×全幅×全高:4490×1860×1810mm
●ホイールベース:2715mm
●車両重量:1650kg
●エンジン:直4SOHCディーゼルターボ
●総排気量:1460cc
●最高出力:85kW(116ps)/3750rpm
●最大トルク:270Nm/1750rpm
●トランスミッション:7速DCT(7EDC)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:軽油・54L
●WLTCモード燃費:17.3km/L
●タイヤサイズ:205/60R160
●車両価格(税込):419万円

プジョー リフター ロングGT主要諸元

●全長×全幅×全高:4760×1850×1900mm
●ホイールベース:2975mm
●車両重量:1700kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1498cc
●最高出力:96kW(130ps)/3750rpm
●最大トルク:300Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:軽油・50L
●WLTCモード燃費:18.1km/L
●タイヤサイズ:215/60R17
●車両価格(税込):455万円

シトロエン ベルランゴ シャインBlueHDi主要諸元

●全長×全幅×全高:4405×1850×1850mm
●ホイールベース:2785mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1498cc
●最高出力:96kW(130ps)/3750rpm
●最大トルク:300Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:軽油・50L
●WLTCモード燃費:18.1km/L
●タイヤサイズ:205/60R16
●車両価格(税込):422万7000円

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