大胆な先進性をアピールする、テールライト
機構的な先進性は、デザイン的にも非常にわかりやすい。両サイドのエアインテークは、ミッドリアに搭載するV8ツインターボエンジンを始動すると自動で開く。生き物が眠りから目覚めたような印象を与える演出ともいえる。
バタフライドアの構造的ソリューションは、LaFerrari(ラフェラーリ)と共通。 フロントヒンジ1か所でで上方へ開くもので、グリーンハウスや構造部には手を加えていない。
クラムシェル式ボンネットの開閉も、きわめてシンプルだ。2 本のピンを取り外すだけで、フロントの検査やメンテナンス作業を行うことができる。
最も大胆な先進性をアピールしているのが、実はテールライトだ。印象的なメタクリル樹脂製のライトブレードは、Ferrari Vision Gran Turismoをインスピレーションとしている。エンジン始動と共に輝きを放つそれは、ひときわ未来的な印象だ。
ボディの塗装色もまた、このクルマのためだけに特別に開発された。4層のアルミニウム塗装は、光の当たり具合や見る角度によって色味が変化する。それは「まるで生き物のように呼吸している」ように見えるのだとか。カラー名は「ゴールド・マーキュリー」と名付けられた。
お披露目は英・グッドウッドフェスティバル
キャビンは488 GT3 Evo 2020を極力そのまま引き継ぎ、無駄を削ぎ落としたデザインで、例外はパッセンジャー側のドアパネルとダッシュボードの仕上げだけとなる。
KC23 専用のシートはアルカンターラでトリミングされ、そこにロゴが電気融着されており、エクステリアと完璧に調和したエレガンスをキャビンにもたらしている。
伝統的なミラーは廃され、美しいフォルムを損なうことのないデジタルカメラシステムが装着された。もちろんエアロダイナミクス的なメリットも大きい。後方視界はビデオカメラシステムで確保されている。
ホイールは専用に設計された2種類を設定する。これもまた「天使と悪魔」に関連していると言っていい。18インチのホイールを装着すれば、世界のサーキットで目を見張る走りを披露する。一方、フロント21インチ+リア22インチのホイールは、静止状態での時に見るものを魅了してくれる。
この最新作は3年に及ぶ開発を終えて、マラネッロの全製品の中で最もエクスクルーシブなグループに加わった。たったひとりのクライアントの理想に応えるビスポークモデルであり、フェラーリのパーソナライゼーション戦略の頂点に位置する。
最初の一般公開は2023年7月13~16日で、イギリスで特に重要なモータースポーツイベントであるグッドウッドフェスティバルオブスピードで展示される。
また、8 月1日~10月2日にはマラネッロのフェラーリミュージアムで展示される予定だ。卓越した美しさとエンジニアリング・ソリューションを自分の目で確かめたい、という熱心なエンスージアストをきっと喜ばせることだろう。
コラム「スペシャル・プロジェクト・プログラムとは」
「スペシャルプロジェクト・プログラム」の目的は、いわゆる「ワンオフ」と呼ばれるユニークなフェラーリを生み出すこと。要望に沿ってエクスクルーシブなデザインが作り出され、そのクライアントが唯一無二のモデルのオーナーとなる。各プロジェクトはクライアントのアイデアを出発点とし、それをフェラーリスタイリングセンターのデザイナーチームが連携して発展させる。車両のプロポーションとフォルムを決定したら、デザインを詳細に検討し、スタイリング用クレイモデルを製作した上で、新ワンオフの製造工程に入る。全プロセスには平均約2年を要し、その間、クライアントはデザインの評価や検証プロセスに密接に関わる。こうして跳ね馬のロゴを装着し、マラネッロ生まれの全モデルと同じ卓越した水準で設計されたユニークなフェラーリが誕生することとなる。