新たに開発された3.8L V8ツインターボを搭載
「ランボルギーニ SC63」は、IMSAのLMDh規定、WECのハイパーカー規定に合わせて開発されたレーシングプロトタイプ。規定によって共通のハイブリッドシステムの搭載が義務づけられ、エンジンとモーターによるシステム最高出力が500kW(680ps)に規制されるほか、ギアボックス、バッテリー、モータージェネレーター(MGU)などの標準化、ボディデザインの変更禁止など制約は多いが、それらに対応して、さまざまな意欲的なアイデアが盛り込まれている。
たとえば、エンジンはこのマシンのために特別に開発した3.8L V8ツインターボを搭載しているが、このエンジンには独自の「コールドV」構造が採用されている。これは最近のトレンドとなっている「ホットV」とまったく異なるコンセプトで、Vバンクの外側にターボチャージャーを取り付けて、冷却と整備性を高めるというもの。これにより重心高を下げることに成功し、空力バランス、エアロダイナミクスでも有利となったという。
また、ギアボックス、バッテリーなどの標準化はエンジニアリングの自由度は抑制するが、チームとしてギアレシオの選択やデファレンシャルのスリップ抑制などカスタマイズできる余地はあるとしている。
ボディワークの設計はランボルギーニのチェントレスティーレ(デザイン部門)がレース部門と連携して担当。フロントとリアにアイコニックなY字型ライトなどランボルギーニらしいデザイン要素が表現されている。
シーズン中のボディワークの変更は禁止されている(正確には1種類のボディキットのみ許可)ので、同じボディワークであらゆるサーキットに対応しなければならないが、ランボルギーニはマシンにとって過酷な高温の環境を想定して冷却効果の高いセッティングを採用。たとえば、コクピット後方の大きなサイドポッドには8種類の異なるラジエーターが組み込めるようにしている。