「63」という数字はメルセデスAMG SLの中ではもっともパワフルなエンジンを積むことを意味する。しかしながら粗野や野蛮といった言葉とは無縁の、きわめて完成度の高いモデルに仕上がっている。(Motor Magazine2023年9月号より)

走りはパワフルだが繊細かつ完璧な制御で安心感がある

それでは実際の走りはどうか。今回試乗した新型「SL63 4マティック+」に使用されるエンジンは、M177型と呼ばれる4LのV型8気筒ツインターボ。90度のバンク角内にツインターボのメカニズムを搭載する、「ホットインサイドV」レイアウトで、最高出力585ps、最大トルク800Nmmを実現している。

画像: スポーティなモデルだが、走りの所作は極めてジェントル。写真のようにオウトツがあるカラー舗装の路面でも挙動の乱れは最小限だった。

スポーティなモデルだが、走りの所作は極めてジェントル。写真のようにオウトツがあるカラー舗装の路面でも挙動の乱れは最小限だった。

組み合わせられるトランスミッションは9GトロニックATをベースに電制湿式クラッチ式としたスピードシフトMCT。同時に低負荷時には気筒休止を行うなど、環境面への配慮も忘れてはいない。

ドライブを始めてすぐに感じるのは、このエンジンが低速域から発揮する厚みのあるトルク。アクセルペダルを一気に踏み込めば、もはやそれを無駄なく路面に伝えることは不可能とも思えるが、実はこの新型SL63の駆動方式はSL史上初の4WD。

さらにリアには電子制御のLSDも装備されているから、実際に無駄になるトルクは、従来型よりはるかに少ない。1940kgの車重に対して3.6秒という0→100km/h加速はそれを証明する数字でもある。

「インディビジュアル」、「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツプラス」、「レース」の5種類の走行モードが用意される新型SL。メルセデスAMGが独自に新設計し、AMG GTロードスターよりも50%も高い捻り剛性を実現したというシャシの堅牢さは、もちろんどのモードを選んでも変わらずドライバーの身体に伝わってくる。

加えて油圧式のコントロールスタビライザーを組み合わせたAMGGアクティブライドコントロールサスや、リアアクスルステアリングなど、さまざまなメカニズムが走りをサポートしてくれるのだから、その安定感は絶品と表現できる。SL63、その魅力はあまりに大きい。(文:山崎元裕/写真:井上雅行、佐藤正巳)

メルセデスAMG SL 63 4マティック+主要諸元

●全長×全幅×全高:4705×1915×1365mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1940kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●総排気量:3982cc
●最高出力:430kW(585ps)/5500-6500rpm
●最大トルク:800Nm/25000-5000rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●WLTPモード燃費:7.8-8.1km/L
●タイヤサイズ:前275/35R21、後305/30R21
●車両価格(税込):2890万円

This article is a sponsored article by
''.