堀川遊覧船の電動化は観光都市としての魅力を高める
上定市長 はじめに松江のことをお話しさせてください。
松江は、京都、奈良に並び全国に3つしかない国際文化観光都市の認定を受けています。昭和26年に法律で定められましたが、そこには、明治時代に松江に暮らした文豪・小泉八雲(ラフカディオ ハーン)が世界に松江を知らしめたことが書かれています。そんな松江は今、環境に力を入れ、クリーンな街であることを全国、そして世界にアピールしています。
そして松江は、宍道湖、中海、日本海などに囲まれた「水の都」です。さらに国宝松江城を中心とする城下町で、江戸時代から変わらない歴史のある街なのです。この水の都と松江城の魅力を兼ね備えるのが、1997年からお堀で運行する堀川遊覧船です。国宝松江城と堀川遊覧船は、松江の観光の「一丁目1番地」です。
そして今回ホンダさんと進めている小型船舶用の電動推進機を使った堀川遊覧船の実証実験は松江の環境、脱炭素へのチャレンジの中核であり、松江の電動化への取り組みの象徴的なものです。松江がクリーンでサスティナブルであるということは市民とも共有しつつありますが、今後、これを世界にアピールして、多くの人に集まっていただくためスターティングポイントに立っています。
── 市長は、先日ホンダの小型船舶用電動推進機プロトタイプを使った堀川遊覧船に乗られましたが、その感想から教えてください。
上定市長 船頭さんと大きな声を出して会話する必要がなくなりました。船頭さんは橋の下で歌を歌うこともありますが、エンジン音がなく二酸化炭素(CO2)も排出しない電動船は絶好のステージです(笑)。お堀のまわりはとても静かな場所なので。
松江城のまわりは水鳥なども多く、そのさえずりが聞こえるのもいいですね。松江の自然環境を守りながら、心豊かに観光を堪能していただける唯一無二の取り組みです。
── 松江城とお堀の遊覧船などの素晴らしさを世界に広めるための方策はどのようなものですか。
上定市長 アメリカとフランス、台湾を、観光誘致の重点市場と決めています。「Authentic(本物の) Japan MATSUE」というスローガンを掲げトップセールスをしているところです。先日、アメリカに行き松江城と松江の誇る「茶の湯文化」を紹介してきましたが、そこで感じたのは、アメリカ社会が気候変動を最重要課題と捉えてCO2を出さない取り組みを求めていることです。その解決策のひとつがホンダのモバイルパワーパックe(MPPe)と言えます。バッテリーは、さまざまな使い道があるのも魅力です。
── 松江市が脱炭素先行地域に選定されました。歴史があり伝統、文化も素晴らしい場所なのですが、こうしたところこそ、カーボンニュートラル化は重要課題と考えますが、いかがでしょうか。
上定市長 脱炭素先行地域は、松江市だけではなく、中国電力や山陰合同銀行、JR西日本や日本旅行、IIJにも入っていただき12の企業と共同提案しました。そこでは国際文化観光都市・松江の脱炭素化による魅力的なまちづくりをテーマにしています。堀川遊覧船の電動化もそのひとつです。こうした点が国に評価されて脱炭素先行地域に選定されました。