動力性能を求める人の本命ターボエンジン搭載モデル
さて、もう1台は、ターボエンジンを搭載する「カスタム」の試乗。こちらは動力性能を求める人やは高速道路での移動が多い人にとって本命となるモデルだろう。このターボエンジンも先代と変わらず、スペックは最高出力64ps、最大トルク104Nmを発生している。
正直、ターボモデルは先代のカスタムを試乗しても、自然吸気に比べて余裕のある動力性能や乗り味に「これでいい」と思えるぐらい十分な性能を持っていたが、新型と乗り比べてみると、やはり新型の方がエンジン回転のフィーリングや音に雑味がなく、伸びやかな気持ちの良い加速が味わえる。しかもパワーに余裕があるターボモデルの方が当然だが、回転数を上げなくても良いので高速域での静粛性は自然吸気モデルよりも高そうだ。
また、これだけ全高が高いにも関わらず、フットワークは軽やか。コーナリング時のロールの少なさと車高の高さを感じさせない安定感は、さすが3代目になるだけあり、かなり熟成されている。ターボモデルは先代よりも前後のサスペンションの減衰力も変更しているとのことだが、15インチタイヤとの相性も良く路面とのあたりも優しい。乗り心地は自然吸気モデルよりも洗練されていた。
今回、装備面では、車載通信モジュール「ホンダコネクト」を軽自動車で初採用したことや安全運転支援システム「ホンダセンシング」を全車に標準装備としたことがポイントだろう。前者はスマートフォンのアプリでドアロック解除やパワースライドドアの開閉操作ができるもので、後者は、フロントワイドビューカメラと前後8つのソナーセンサーを採用。従来の機能に加えて、近距離衝突軽減ブレーキと急アクセル抑制機能を新たに追加している。
ADASは不安を感じさせない「いい塩梅」でサポート
また、前述したホンダセンシングの機能のひとつACC/LKASの操作方法が改善されたのもトピック。これによりスタンバイ状態からハンドル右側のスイッチを押すだけでセットが可能になった。これは先代のACC使用率が低かったことから、操作方法を改善し、より多くの人に体感してもらいたいとの思いで変更したという。さらにACC使用中の加減速の具合も不安を感じないよういい塩梅に調整しているというから、今後公道で試乗する機会があれば、ぜひ試してみたいところだ。
軽自動車規格というボディサイズやエンジン排気量などレギュレーションが決められた中での作り込みはもはやF1マシンのようだが、軽自動車の王者も3代目にして、さらに熟成された。全方位に進化した新型は、「これがほしい!」と思える魅力的な内容になっていた。(写真:伊藤嘉啓)
新型N-BOXの車両価格は164万8900円〜188万1000円、カスタムシリーズは184万9100円〜236万2800円。また同時に発売された福祉車両のN-BOX スロープは184万4000円〜218万8000円となる。
ホンダ N-BOX 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1790mm
●ホイールベース:2520mm
●車両重量:910kg
●エンジン型式・種類:S07B型・直3DOHC
●排気量:658cc
●エンジン最高出力:43kW(58ps)/7300rpm
●エンジン最大トルク:65Nm/4800rpm
●トランスミッション:CVT
●WLTCモード燃費:21.6km/L
●タイヤサイズ:155/65R14
●車両価格:164万8900円