これで魅了されないわけがない
ベントレーのクルマたちが身に着けている、ブリティッシュラグジュアリーの世界観。それは私のような英国紳士とはほど遠い人間とは不釣り合いであるけれども、その雰囲気は一度味わっただけで魅了されてしまうほど確かな魅力がある。
今の時代、2ドアのラグジュアリークーペというある意味、贅の極みのような乗り物に乗ることは決してステータスのためではないはず。しかもベントレーの中でも、4ドアサルーンのフライングスパー、そしてSUVのベンテイガと魅力的なモデルがある中であえてコンチネンタルGTやコンバーチブルのGT Cを選ぶ人がいるのだ。今回はそんなこのクルマの魅力を改めて確かめてみたかった。
と、試乗する前にはそんなことをずっと考えていたのだが、いざ試乗したら、その世界観にいきなり心を打たれてしまった。
今回の試乗車であるアズールは、専用の内外装を持つ、コンチネンタルGT Cの中でももっともラグジュアリーなモデルになる。長くて重い重厚なドアを開ければ、インペリアルブルーのカラーリングで統一された贅沢すぎるインテリアが広がっている。
わずかな時間ドライブしただけでも、極上のラグジュアリーを体験
クルマへ乗り込み、シートポジションを整えると、シートバックからヘッドレストまで電動で細かく調整が可能。これは「フロントシートコンフォートスぺシフィケーション」によるもので、この他にもシートヒーター、ベンチレーション、ネックウォーマー、マッサージ機能まで備わっている。まさに、至れり尽くせりである。
スタートスイッチを押せば4L V8が一気に目覚める。屋根を閉めた状態では意外と大人しいが、耳を澄ませばドコドコというエンジンの鼓動が聴こえてくる。
走り出すとクローズドではクーペボディと同じぐらいに高い静粛性。しかし、一度屋根を開けてしまえば、4L V8ツインターボの濃厚すぎるサウンドが聴こえてくる。このエンジンのフィーリングは実に上品だが、それでいてアクセルペダルを踏み込めば野性的でパワフル。まさにGT Cのキャラクターにぴったりではないか。
足まわりはほどよく引き締まっているが、段差やオウトツなどで不快さは感じさせない。ハンドリングは基本重厚なフィーリングでありながら、本気を出せば機敏にも動ける機動性もあわせ持っている。
今回は都内でのドライブとなったが、このクルマの真価はGTという名のとおり、ロングドライブにこそあると思う。しかし、ちょっとしたドライブでもその節々から感じるベントレーの世界観を十分に堪能することができた。(文:Motor Magazine編集部 中村圭吾/写真:井上雅行)