走りや乗り心地の良さに妥協のない作り込みを実感
ボディバランスを考慮してホイールベースは標準比180mm延長したベンテイガEWB。リアのレッグルームは1039mmと広大なスペースをもつ。
ベンテイガEWB アズールのドライバーズシートに乗り込み、試乗を始めてまず感銘を受けたのが、ホイールベースを延長したにもかかわらず、ボディ剛性の低下がまるで認められない点だ。これはフロアの設計を見直して補強を行った効果とみて間違いない。
同様にして、ベンテイガ標準モデルと比べてもステアリングレスポンスに一切の遅れがなく、ドライバーの意のままにノーズが向きを変えてくれる点も特筆すべき。そして、前輪が路面とコンタクトしている様子が克明に伝わってくるステアリングインフォメーションの点でも、標準ホイールベースのベンテイガに対する遜色はまるで認められない。
小回り性にいたっては、ターニングサークルが標準ベンテイガの12.4mに対してベンテイガEWBはAWSのおかげもあって11.8mと逆に小さくなっているほどだ。
一方でベンテイガEWBの動力性能は0→100km／h加速が0.1秒遅れの4.6秒でほぼ互角、最高速度は290km／hでまったくの横並び。おそらく、直接乗り比べても、2台の違いを体感するのは至難の技だろう。
ただし、乗り心地の点ではベンテイガEWBが標準モデルを確実に凌いでいて、ドライブモード＜Bモード＞同士で比較すると、路面から伝わるゴツゴツ感は一段と軽くなっていることに気付く。これは、ロングホイールベース化によって衝撃が分散された効果とみていいだろう。
スポーツモードを選んでも足まわりが硬いとは感じられない。しかもフラット感はほぼ同等か、EWBが標準モデルをわずかに上回るように思われた。
すなわち、ベンテイガEWBはベンテイガのダイナミック性能を損なうことなく、後席の居住スペースを拡大したうえで快適性を大幅に向上させた点に特徴がある。その根底にあるのは、乗員のウェルビーイングを第一に考えた、いかにもベントレーらしいクルマ作りの哲学なのである。（文：大谷達也／写真：佐藤正巳）
ベントレー ベンテイガEWB アズール ファーストエディション主要諸元
●全長×全幅×全高：5305×1995×1755mm
●ホイールベース：3175mm
●車両重量：2570kg
●エンジン：V8DOHCツインターボ
●総排気量：3996cc
●最高出力：404kW（550ps）／5750－6000rpm
●最大トルク：770Nm／2000－4500rpm
●トランスミッション：8速DCT
●駆動方式：4WD
●燃料・タンク容量：プレミアム・85L
●WLTPモード燃費：7.6km／L
●タイヤサイズ：285／40R22
●車両価格（税込）：3162万5000円
