BEVであれば、どんなモデルでも新しい価値観を備えているだろうと思い込むのは早計である。たしかに、クルマが電気モーターで走ることにはまだ新鮮味があるかもしれないが、それだけではすぐに陳腐化する。クルマとしてどのような世界観を提供すべきで、それをどこまで突き詰めているのか。EQS SUVはそこを知る最適例だろう。(Motor Magazine2023年11月号より)

静粛性と快適性を両立。姿勢変化は明らかに安定

走行中のノイズが小さいこと、そしてエアサスペンションを採用したことで得られた快適な乗り心地もこのモデルでは大きな魅力のひとつだが、こうなると気になってくるのはタイヤからのロードノイズの大きさだ。

画像: 朽ちた流木は果たして何かを象徴しているのか。真夏の砂浜と最新BEV SUVの組み合わせ。

朽ちた流木は果たして何かを象徴しているのか。真夏の砂浜と最新BEV SUVの組み合わせ。

試乗車に装着されていたのは21インチ径のグッドイヤー製タイヤだったが、それがもう少し収まればというのはやはり贅沢な希望なのだろうか。

フロア下にリチウムイオンバッテリーを敷き詰める低重心のBEVは、コーナリングにも有利な基本設計が可能だが、それはこのEQS 580 4マティックSUV スポーツでも変わらない。しかしながらこのようなシーンでも、やはりこれだけのサイズを持つモデルとなると、スポーツカー並みのクイックなコーナリングを楽しもうというわけにはいかない。

たしかにコーナリング時のボディの姿勢変化は明らかに安定しており、これらはエアサスペンションや前後の駆動力配分を常に最適に制御してくれる4マティック機構、そして最大で10度の舵角が得られるリアアクスルステア(後輪操舵)などの相乗効果によるもの。さすがはメルセデスEQブランドの最上位に位置するモデルだけのことはあると納得させられた。

このEQS 580 4マティック SUVVスポーツにも、ドライブモードを選択できる機能は与えられているのだが、その中でも興味深かったのは、いかにもSUVらしい「オフロード」モードが用意されていることだ。

このモードを選択すると車高がアップし、こちらもエアサスペンションやブレーキ、そしてリアアクスルステアなどの制御とともに、最高130km/hまでオフロード走行をサポートする。今回は軽く砂地を走る程度のチャレンジだったが、想像以上の走破性を見せてくれた。

そしてリアアクスルステアに関して報告するならば、やはり都市部の狭い道でも、取り回しに苦労することはほとんどなかった、ということを付け加えておきたい。

メルセデス・ベンツにおけるEQというブランドは、果たしてこれからどのように進化を遂げていくのだろうか。かつて化石燃料を使う自動車というものを発明した彼らは今、電気自動車の先駆者のひとつとして、その道を切り開いている。我々は今、歴史的な変革を目にしているのだ。(文:山崎元裕/写真:永元秀和)

メルセデス・ベンツ EQS 580 4マティック SUV スポーツ主要諸元

●全長×全幅×全高:5135×2035×1725mm
●ホイールベース:3210mm
●車両重量:2880kg
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:265kW(360ps)/5198-8786rpm
●モーター最大トルク:568Nm/0-4340rpm
●バッテリー総電力量:107.8kWh
●WLTCモード航続距離:589km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:275/45R21
●車両価格(税込):1990万円

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