1.6L直噴DOHCターボエンジンと第二世代の6速ATの組み合わせ
2008年にデビューを飾ったシトロエンC5は、アッパーミドルクラスいわゆるDセグメントに属するモデルである。ボディサイズは、全長がセダンで4795mm、ワゴンのツアラーは4845mm、そして全幅が1860mmとやや大きめだ。広く受け入れられる素養を全面にアピールしたモダンかつ流麗な内外観のデザインは、シトロエンの目論見どおり多くのユーザーに受け入れられ、全世界では2009年までですでに約77万台もの台数が販売されたという。
そのC5が日本ではこの5月27日(2010年)、マイナーチェンジを受けた。目玉は、これまで自然吸気の2L DOHCエンジンと4速ATの組み合わせだったベーシックグレードのパワートレーンを一新、1.6L直噴DOHCターボエンジンと第二世代の6速ATが組み合わされたこと。
欧州ブランドが進める「パワートレーンのダウンサイジング路線」の実際を知っていれば、2L自然吸気エンジンが1.6L直噴ターボエンジンで置き換えられることに不安を抱く必要はない。動力性能の進化とともに、静粛性や燃費の向上といったメリットも大きく期待できるからだ。
2Lエンジンと4速ATの「C5 2.0」を上回るパフォーマンス
試乗したのは、フルレザーシートと18インチタイヤ&アルミホイール仕様などが特徴となる上級グレードの「C5ツアラー エクスクルーシブ」。
エンジンを始動させるといたって静かなアイドリングだ。アクセルペダルを踏み込んでスタート。この時、瞬間的にだが排気量の絶対値を感じた。
2Lエンジンと4速ATの「C5 2.0」では、何ら気を使うことなくアクセルペダルを踏めば、ゆるやかではあるが滑らかな加速感でスタートを切ることができた。だが新しいパワートレーンでスムーズな加速感を伴うスタートを切るためには、ちょっとしたコツが必要なのだ。
何気なくアクセルペダルを踏んでしまうと、アイドリング域からの低回転ではまだターボによる過給効果が十分に効いておらず、そしてすぐに過給が立ち上がるので、段付きの加速感になってしまいがちだった。軽く踏むだけだと期待した加速感にならないし、最初から深めに踏んでしまうと、飛び出すような感じとなる。ただこれは、走らせていると「ターボが効いてきたな」とか「ATがきちんと力を伝えてくれているな」とかわかりやすく感じられたので、そのうちに「踏み増しの術」を会得することができた。
その他の場面では、新しいパワートレーンの印象は非常に良かった。ちょっと「エンジンが頑張っているなぁ」と思える場面もあったが、高速道路での合流に必要な加速性能や巡航時のパフォーマンスは「C5 2.0」の性能を確実に上回る。市街地での走行も十分以上のものだった。
この6速ATは3L V6エンジン搭載の「C5 3.0」がデビュー時から装備する6速ATの第二世代版で、機構的なフリクションを最小限に抑え、さらに効率を高めるべく2速から6速でのロックアップ領域を広げるなどしたもの。シフトチェンジのスムーズさ、ドライビング時のダイレクト感、そしてタイムラグの小さいシフトレスポンスが特徴として挙げられている。
油圧サスペンションのハイドラクティブⅢは変わらぬ気持ちよさを披露してくれ、全体としてのダイナミック性能も十分に高いと感じた。
車重は従来の「C5 2.0ツアラー」と比べて10kg減の1680kg。10・15モード燃費は9.1km/Lから10.2km/Lに向上。車両価格は、新たなベーシックモデルである「C5ツアラー セダクション」とそれまでの「C5 2.0ツアラー」で比較すると、5万円のアップという設定になっている。
「C5 ツアラー エクスクルーシブ」の車両価格は479.0万円。その装備面は、V6モデルの「C53.0ツアラーエクスクルーシブ」(514.0万円)に準じている。シトロエン流のクルマづくりの考え方に共感するならば、この1.6L版を選ぶのも独創的でいいチョイスだと思えた。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁/写真:永元秀和)
シトロエン C5ツアラー エクスクルーシブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4845×1860×1490mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:1680kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:115kW(156ps)/6000rpm
●最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1400-3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:479万円(2010年当時)