MINI専用に開発されたBMW製の新しいディーゼルエンジン
早いものでBMWのMINI、いわゆるニューMINIの登場から今年でもう9年が経過する。この間にニューMINIはクラシックミニに負けないほどのプレゼンス、つまり存在する意味と場所を見つけたようである。
それゆえに今回行われたフェイスリフトはデザインに大きな変更を与えるものではなく、内包する技術的なアップグレードと解釈するのが正しい。
もっともフロントバンパーの形状変化は実は新しい歩行者保護対策というレギュレーションに起因するもので、デザインのためのデザインではない。同時にLEDによるデイドライビングライトも同じく法的な要求によるものであることはお知らせしておきたい。
また技術的なものと言っても、パワープラントにおいては今年初めにガソリンエンジンの改良が行われたので、今回のフェイスリフトでの注目点はまったく新しい2基のBMW製ディーゼルエンジンの登場である。PSAから離れて開発されたMINI専用のBMWディーゼルエンジンは、排気量1.6Lの4気筒で2種類のチューニングが用意されている。
最高出力90psと最大トルク215Nmという旧PSAエンジンとまったく同じスペックを持つディーゼルエンジンは、MINI ONE Dへ搭載され、走行性能には変化はない。
一方、クーパーD用に用意されたバージョンは、最高出力112ps/最大出力270Nmを発生するが、これは旧エンジンよりもパワーでプラス2ps、トルクでプラス30Nmほど強力になっている。
このクーパーDにおける変更の理由は、これまでのモデルに搭載されていたエンジンの低回転付近でのトルクが〝やや頼りない〟という声が上がってきたことに対応したものである。
確かに改良されたエンジンでは、低回転域でも十分なトルクがあり、シフトダウンすることなく高いギアでもそのままアクセルペダルを踏み込めば他をリードするほどの加速力が得られるようになった。またこの改良は単にドライバビリティの向上だけでなく、燃費の改善にも役立っている。
改良されたディーゼルを搭載したMINIクーパーDの燃費はBMWの発表によれば100km走行で3.8Lを消費、 CO2の排出量は99g/km を記録している。これはそれぞれ約5%の向上となっている。また排出ガス規制値は両エンジンともに現時点でもっとも厳しいユーロ5をクリアしている。
内外装のデザインの変化はよく見ないとわからない
ところでMINIの性格上で大事なことだが、このように燃費の向上が実行されても、アジャイルな走りの性格にはなんら変化のないことである。それはこの日、MINIクーパーD カブリオレでミュンヘン市内と郊外を200kmほど走って改めて実感した。
ちなみにクーパーD カブリオレのカタログに記載された性能は0→100km/hの加速所要時間が9.7秒、最高速度は197km/h(ともに6速MT)である。
フェイスリフトというくらいだから外観のデザインにも変化があっておかしくはない。しかし新しい世代のMINIは非常につつましい変化で我慢させられている様子である。
外観でもっとも目立つ変更はリアで、クロームで縁取りされたコンビネーションライトがLEDに変わり、リアフィニッシャーの中のリフレクターにもクロームの縁取りが付いた。さらに観察するとフェンダーサイドのウインカーデザインも変わっていた。MINI担当チーフデザイナーのゲルト・ヒルデブラント氏によれば、こうしたディテールの集まりが最終的には新しいMINIの香りを作り出すのだという。
またインテリアの変化は非常に控え目で、オーデオとエアコンの操作系が変わった他に、よく観察するとセンターコンソールのデザインとシートの表皮デザイン、インテリアアプリケーションの一部が変わっているのがようやくわかるほどだ。
一方、新しいラジオとナビシステムでは、新たに「MINIコネクテッド」をシステムと組み合わせることができる。つまりドライバーは自分のiPhoneにあるエンターテイメントを車内にあるオンボードモニターを通じて楽しむことができるのである。さらにフェイスブックやツイッターの車内受信も可能である。加えて世界中のウェブラジオから好みの番組を検索して楽しむことも可能だ。
このフェイスリフトを受けたMINIは、ドイツでは9月18日からディーラーのショールームに並ぶ。またそこに掲げられるプライスタグには、75psのONEが1万5550ユーロ(約170万円:19%の付加価値税込)、今回紹介したディーゼル仕様のONE Dには1万8450ユーロ(約202万円)、そしてクーパーDは2万1250ユーロ(約233万円)の金額が示される。(文:木村好宏/写真:kimura office)