「力任せ」ではなく、軽さで実現した速さ
フロンクスが搭載する1.5L直4エンジンは「K15C型」と呼ばれる、エスクードに搭載されたものと基本は同じです。ただし6速ATを採用するにあたって圧縮比が見直されたほか、これに組み合わされるマイルドハイブリッド機構は、エスクードのそれに比べて簡易的なもので、駆動系のアシストやEV走行などはできません。
したがって先ほどの登坂加速においてモーターがそれをアシストすることはなく、モーターはあくまで電装系(とくにエアコンなど)を動かすための動力としての役割を担います。これによってエンジンが駆動以外にかかるエネルギーを最小限にすることができ、結果として燃費の向上につながるといいます。
エンジンスペックは最高出力が100ps、最大トルクが134Nmと、数値だけを見るとなかなか非力だと予想されますが、フロンクスは4WD仕様でも車両重量が1130kgと軽量なため、パワー不足を感じる場面はほとんどありませんでした。
ワインディングコースは頂上に差しかかり減速するためにブレーキペダルを踏むと、初動は「ピクっ」とした減速感がありつつも、その後さらに踏んでいくとペダルストロークはやや長めで、じわじわと確実に効いていくという「安心感・良質感」がありました。またフロンクスにはパドルシフトが備わっているため、任意でシフトダウンを行いエンジンブレーキをうまく使うことも可能です。
続いてパイロンスラロームの区間では、時速20〜30km/hの低速域でハンドルを左右に振ってみました。するとボディの一体感が非常に強く、リアはきちんと路面にへばりついたように安心感の高い走りを見せてくれました。また低速域でも割合に重たいハンドルですが、最小回転半径はスイフトやソリオと同じ4.8mを実現していますので、取り回し性で苦労することはなさそうです。
そして気になる乗り心地ですが、日本の道路環境に合わせてコイルスプリングやショックアブソーバーを最適化しているそうで、路面にみられる凹凸や継ぎ目などを通過した時に入力自体の強さは感じるものの、全体的に角が取れたマイルドなものでした。一般道路や高速道路での印象はまだわかりませんが、少なくともクローズドコースで乗った限りでは、スイフトよりも上質で当たりの優しい乗り味だった印象です。他のライバル勢と比べても、乗り心地の「ゆったり感」は一枚上手な気がしました。