回帰するのは原点ではなく原体験。3世代分の進化は半端ない
さて、ここからがいよいよ「原体験回帰」の本番です。
高効率な2L 直列4気筒ツインパワーターボエンジンは、最高出力150kW(201ps)/5000rpm、最大トルク300Nm/1450-4500rpmを発生。本当の意味で「素」というならばクーパーC 3ドア115kW(154ps)/230Nmを選ぶべきところですが、MINIの本質がパワースペックの問題ではないことが、かえってわかりやすく伝わってきたように思えます。
走り出した瞬間から、このエンジンが只者ではないことはすぐにわかります。アクセルの踏み込みに対するツキが恐ろしくリニアで、しかもスムーズ。ともすれば「BEV仕様の方に乗っちゃったかな?」と、疑ってしまいほどに立ち上がりから力強く、気持ちよい伸び感を味わうことができます。
実は「原体験」となるR50型MINIONEは、数値的にはパワーもトルクも新型クーパーSの半分くらいしかありません。それでもフラットで力強いトルク感には相通じるものがあるように思えました。
さらに、前輪の接地感がわかりやすいところも初代からのMINIらしさの継承と言えるでしょう。わかりやすく「前輪で引っ張っている」感は、ともすれば「トルクステア」的に、前輪駆動車の欠点として捉えられがちかもしれません。しかしMINIの場合は伝統的にそれが、実は類まれな個性を生んでいます。
おかげで高速道路をまっすぐ走っていてもMINI は、常に次の運転操作に素早く反応できるように身構えているかのような「気合」を感じさせます。こちらもまたともすれば「落ち着きがない」と評されそうですが、MINIの場合はさにあらず。
ほどよく神経を使いながらも、頼りがいのある直進性はしっかりキープ。その上で絶妙なサスセッティングのおかげで、さながら気心の知れた友人とおしゃべりをするかのように、まっすぐ走っていても歯切れのよい「対話=ドライビング」を楽しむことが可能です。
タイヤを始めとするノイズがかなり盛大に室内に響くのは少し気になりましたが、乗り心地は全般的に良好。「原点」に回帰するのではなく、いい意味での「原体験」を再構築しながら同時に、3世代分の進化はしっかり「洗練」という恩恵をもたらしているのでした。
MINI Cooper S 3 Door 主要諸元
●全長:3875mm
●全幅:1745mm
●全高:1455mm
●ホイールベース:2495mm
●排気量:1998cc
●エンジン:直列4気筒ターボ
●最高出力:150kW/5000rpm
●最大トルク:300Nm/1450-4500rpm
●価格:465万円