2010年9月のパリサロンで世界初公開された2代目ベントレー コンチネンタルGTの国際試乗会が2010年11月に行われた。Motor Magazine編集部もこの国際試乗会に参加、2011年2月の日本国内導入発表を前に試乗テストの模様をレポートしている。今回はその試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年2月号より)

キープコンセプトだが、よく知る者には明確にわかる新しさ

車両価格にして2000万円前後を境に、ハイエンドラグジュアリー市場が形成されているとすれば、そのイニシアチブを一夜にして掌握したクルマ……ベントレーのコンチネンタルシリーズに関しては、そう言い切っても差し障りはないだろう。

なにせコンチネンタルGTだけで、その販売台数は約2万4000台。クーペ1車種にして、それまでのベントレーの総生産台数を塗り替えてしまったというのだから尋常ではない。一時はフライングスパーやGTCを加えると、年間9000台近くの数を売っていたわけで、並みの会社なら完全に商売感覚が麻痺して自壊してもおかしくはないところだ。

しかしベントレーは動じることなく、このコンテンポラリーラインのフルモデルチェンジにもキープコンセプトを貫いた。見る者にはわかる新しさ。逆に言えばそのデザインは、意識しない者にはコンチネンタルGTであること以上のインフォメーションを持たせない配慮ともいえるだろう。既納客や見込み客の8割が変わることを望まなかったというクリニックでの裏付けは、彼らにとっては自らのこれまでの仕事の支持を裏付ける数字でもある。例えるなら、911のようなユーザーとの関係を作りたい。かつてボードメンバーがプレゼンテーションで幾度か口にしたこの言葉を、新型コンチネンタルGTは実践したわけだ。

新型コンチネンタルGTのスタイリングのキーファクターは、ミュルザンヌ同様、航空機のハイドロフォーミングテクノロジーを使って形作られる1枚もののフロントフェンダーに代表されるかもしれない。トレッドの拡幅や大径タイヤの装着にあわせて、ぐっと力強いものへと改められたリアセクションと相まって、Rタイプ コンチネンタルへのオマージュを強く滲ませながらも、これまでとは違う力強い塊感を示している。

そのボンネットに搭載されるエンジンは、もはやベントレーの主力ともいえる6LのW12気筒。初代ベースのスーパースポーツでは612psまで高められていた出力は今回575psと発表されている。が、このレベルの差異はこのクルマのドライバビリティにとって深い意味はない。

むしろ注目すべきは構成部品を刷新してのフィーリングの改善や、フレックスフュエルの対応による仕向地でのCO2削減への配慮といったところだろう。ちなみに新型コンチネンタルGTには、4L V8を搭載したグレードが2011年末までに登場すると既にアナウンスされている。

W12ユニットに合わせられるトランスミッションは、従来と同様、ZFの6速ATだが、こちらも構成部品や制御系のリファインにより、変速スピードを従来比より倍増させたほか、2段落としのコマンドにも対応している。また、フルタイム4WDの駆動配分を従来の50:50から40:60へと若干後傾化させて旋回性の向上を図るなど、運動性を高めるセットアップが随所になされている。

そしてサスペンションは前41mm、後48mmと拡大されたトレッドにあわせてブッシュ類に至るまで全てを一新。タイヤは標準が20インチ、オプションで21インチの選択も可能だ。

画像: キープコンセプトを貫きつつもスーパーフォーミングなど最新技術で彫刻的なエクステリアを実現。

キープコンセプトを貫きつつもスーパーフォーミングなど最新技術で彫刻的なエクステリアを実現。

フラット感を高めながら濁りのないフィールも併せ持つ

走りのポイントを集約すれば、従来型に対してライドコンフォートの劇的な向上を見ながら、一方で従来型スーパースポーツのアジリティやインフォメーションを取り込んだフィーリングもあわせ持つということになるだろう。

乗り心地に関していえば、従来型の鷹揚なピッチ感は一段締まったものになり、路面状況にややナーバスな一面が見られたその癖は綺麗に消されている。総じてフラット感が大きく高まった上、路面や速度を問わずしっとりと入力をいなす、ある種の湿っぽさがライド感に加わったといえるだろう。

同時に向上した静粛性に関しては、ウェザーストリップやインシュレーター、メルシート類、ガラス類の変更といったポイントが効いているのだろう。刷新された内装を含め、そのラグジュアリー性も大きな進化を遂げた。

速度を上げれば際立ってくるのが、大きなマスを感じさせない回頭性の高さと、豊富になった車両側からの情報だ。駆動配分もさることながら、サスペンションの追従性が大幅に向上したことは接地感の高さからも見てとれる。ドライバーの操作との一体感向上はあらかたで、タイトなワインディングでは車体がひと回り小さくなったかのような印象を与えながらも、200km/h超での高速直進性や旋回性にはなんら濁りを感じさせない。

他車を圧するプレステージ性と、走るシーンを選ばないGTぶりとを高い次元で両立した新型コンチネンタルGT、その日本上陸は2011年の春先が予定されている。(文:渡辺敏史)

画像: 内装は大きく刷新。インパネ形状はベントレーの翼のデザインをモチーフにしている。

内装は大きく刷新。インパネ形状はベントレーの翼のデザインをモチーフにしている。

ベントレー コンチネンタルGT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4806×1944×1404mm 
●ホイールベース:2746mm 
●車両重量:2320kg  
●エンジン:W12DOHCツインターボ
●排気量:5998cc
●最高出力:423kW(575ps)/6000rpm
●最大トルク:700Nm/1700rpm 
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●最高速度:318km/h
●0→100km/h加速:4.6秒
※EU準拠

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