この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第98回目は、トヨタ セリカの上級モデルとして存在感を示した、セリカXX2600GTの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

スポーティカーからラグジュアリーカーへ脱皮
6気筒エンジンでグランドツアラーとして登場

昭和45(1970)年の初代発売以来、直列4気筒エンジンのみを搭載してきたセリカ。若者層を中心に絶大な支持を得てきた車種だが、昭和53(1978)年4月に、セリカの上級車種としてセリカXX(ダブルエックス)シリーズが登場した。

画像: 走りはそれまでのセリカの軽快感と比べると大陸的な鷹揚さを持つ。トルクフルなエンジンと併せ、柔らかいサスペンションの組み合わせだ。

走りはそれまでのセリカの軽快感と比べると大陸的な鷹揚さを持つ。トルクフルなエンジンと併せ、柔らかいサスペンションの組み合わせだ。

これには2600G/ 2000Gとネーミングされたモデルを追加設定し、直列6気筒エンジンのみを搭載しての発売だった。ちなみにこのセリカXXが北米ではスープラと名付けられた。この位置づけについては後にも触れたい。

セリカXXは、セリカのリフトバックを基本にフロントノーズを210mm延長(セリカST比)、同時にホイールベースも130mm延長して、2630mmの設定としている。フロントデザインには角型ヘッドランプを採用するとともに、かつてのトヨタ2000GTを思わせるT型グリルを採用したのも特徴だった。

それまでのスポーティなセリカのイメージと比較してラグジュアリー志向が強くなった。ユーザーの年齢の移行に合わせた仕様ともいえるだろう。シート生地は全車にファブリックを採用するとともに、フロントシートバックはポケット付き。写真(上)のGタイプには高級本革シートを特別注文で設定できた。

もちろん新たに2.6ℓ直列6気筒エンジンを搭載したことによって変貌した走りも大きな魅力だった。 2600Gに搭載されたエンジンは、電子式インジェクションであるEFIによる燃料供給を受ける2563ccの直列6気 筒SOHCの4M-EU型。140ps/5400rpmの最高出力と21.5kgm/3600rpmの最大トルクを発生していた。

ちなみに2000L、S、G各グレードに搭載される6気 筒SOHCのM-EU型 は、 最 高 出 力125ps/6000rpm、最大トルク17.0kgm/4400rpmの性能で、こちらでもゆったり走るのには十分な動力性能といえた。

画像: 長大な4M-EU型の直列6気筒エンジンを収めるため、XXのノーズはセリカより210mm長くなっている。2600ccの大排気量で、140ps/21.5kgmのスペックを与えられた。

長大な4M-EU型の直列6気筒エンジンを収めるため、XXのノーズはセリカより210mm長くなっている。2600ccの大排気量で、140ps/21.5kgmのスペックを与えられた。

2.6Lのユニットに組み合わされたトランスミッションは、5速MTと4速ATの2種類が設定された。従来から設定されていた2Lの直列4気筒エンジンと大きく異なるのは、やはり大排気量による豊かなトルク感覚、そして6気筒ならではの完全バランスの静粛性で、これはセリカXXが最も重要な輸出市場として考える北米での嗜好性を十分に考慮した結果といえる。

サスペンションは基本的にセリカと同様の構成となっていた。ラグジュアリー志向はこちらでも顕著で、乗り心地は非常に柔らかなもので、一般的なスポーツモデルとは明らかに異なる印象だった。ただ、乗り心地がいいだけではなく、ときにはアメリカンクルーザーとも錯覚するような、豪快で快適な走りが味わえたモデルだったことが印象深い。

ちなみにモーターマガジン誌(昭和54年6月号)では、同じ6気筒のBMW323i(ヨーロッパ仕様車)と比較テストを行っている。最高速度は、BMW=200km/h、セリカXX=177.34km/h。0→400m加速はBMW=15.85秒、セリカXX=17.52秒とBMWの圧勝だった。

アウトバーン走行で鍛え抜かれたヨーロッパのGTカーとアメリカ向けGTカーとの差が出た形だが、セリカXXの肩を持てば、世界一厳しい排出ガス規制適合車というハンデを背負ってのものだから、一概にデータだけで結論づけはできない。とは言え、まだ世界との差を見せつけられた感は否めなかった。

セリカXX=北米スープラの位置づけだが、このときはまだセリカのノーズを伸ばした6気筒バージョンというスタンスだった。この後、昭和56(1981)年には、デザインをまったく異にするMA61型セリカXXに進化し、当時のハイソカーの一角を担うようになる。

それについては本誌(下巻)で紹介するが、このベースとなっていたのは初代ソアラなので、ここでセリカとは別の道を歩むようになったと言って良いだろう。

ちなみに2代目かぎりでセリカXXの名称は消え、昭和61(1986)年になると北米での名称のスープラに統一されたA70型が発売され、人気を得ることとなる。

一方、本体のセリカは4気筒エンジン搭載のFRスポーツの道を行き、昭和57(1982)年にはツインカムターボのTA63型セリカ1800GT-Tまで至った後、昭和61(1986)年にはフルタイム4WDのST165セリカGT-FOURにつながっていく。

画像: インテリアの基本デザインは4気筒セリカと共通だが、ダッシュボードにはソフトビニールレザーを貼り高級感を出した。ステアリングは4本スポーク。

インテリアの基本デザインは4気筒セリカと共通だが、ダッシュボードにはソフトビニールレザーを貼り高級感を出した。ステアリングは4本スポーク。

つまり2種類に大きく枝分かれしていくわけだ。そういう面でこの初代セリカXXは、セリカの大きな分岐点となった一台といえる。

EPISODE<谷田部でBMWと比較テスト>

画像: EPISODE<谷田部でBMWと比較テスト>

モーターマガジン誌(昭和54年6月号)で同じ6気筒のBMW323i(ヨーロッパ仕様)と対決。最高速はBMW=200km/h、XX=177.32km /h。0-400mはBMW=15.85秒、XX=17.52秒 とBMWの圧勝。アウトバーン走行で鍛え抜かれたGTカーとアメリカ向けGTカーとの差が出た。XXの肩を持てば、排出ガス規制適合車というハンデはある。

トヨタ セリカXX2600GT(MA46型)諸元

●全長×全幅×全高:4600×1650×1310mm
●ホイールベース:2630mm
●車両重量:1180kg
●エンジン型式・種類:4M-EU・直6SOHC
●排気量:2563cc
●最高出力:140ps/5400rpm
●最大トルク:21.5kgm/3600rpm
●トランスミッション:4速AT
●タイヤサイズ:195/70HR14
●新車価格:190万9000円

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