国産初のターボチャージャー装着車!
地味なイメージのセドリックをスポーティに
21世紀に入って20年以上経った現在ではまったく珍しい存在ではなくなってしまったターボモデルだが、日本で初めて乗用車の分野にターボチャージャーの技術が導入されたのは、昭和54(1979)年のことだった。
同年12月発表のセドリックターボ、そして姉妹車として設定されていたグロリアターボが、日本車では初のターボチャージャーを備えたモデルとなったのだ。
セドリックのターボ装着車の車種体系は、ここで紹介する新設定の4ドアハートトップS(ターボS)の他、セダンSGLエクストラ、4ドアハードトップSGLエクストラの合計3車種というものだった。
もちろんその話題の中心は何といっても搭載されるパワーユニットにあった。L20ET型と呼ばれた1998ccの直列6気筒SOHCエンジンが発生した最高出力は、実に145ps/5600rpm。すでに、ロートルなイメージがあったL20型エンジンに再び輝きを取り戻したと言っていいだろう。
ターボ無しのL20E型エンジンの最高出力が130psだったから、ターボチャージャーで過給することにより15psのパワーアップが実現したことになる。
さらに顕著な違いを見せるのは最大トルクで、 L20ET型エンジンは21.0kgm/3200rpmを発生した。これはL20E型に対してプラス4kgmにもなる。ざっと2.4Lエンジン並みとなったと言えるだろう。
ターボチャージャーは、エンジンから排出させる燃焼後のガスのエネルギーを利用してタービンを駆動し、それと同軸上にある吸気側のコンプレッサーを回転させることにより、エンジンへより多くの空気を加圧して供給するものだ。このように事実上の排気量アップが比較的コストを抑えてできるというのがメリットだ。
もちろん吸気が増えるということはそれに応じた精密な燃料噴射が欠かせない。キャブレターでそれに対応するのは難しいが、排出ガス規制に対応するために電子式燃料噴射装置(日産ではEGI)に変わっていたのも追い風となった。ある意味、ターボエンジンに適した時代が来ていたと言えるわけだ。
ちなみに自動車を製造し販売するためには、メーカーが型式認定を運輸省(当時)から取得しなければならない。当時は「ターボ=パワー」のイメージが先行していて、世を上げた省エネブームの中ではとても認可など下りそうになかったが、ターボの特質である「排気エネルギーの再利用はエンジン効率を高める」という点を、うまく省エネに結びつけることで、見事にターボの認可を勝ちとった。
前例があれば後は雪崩のごとく・・・というわけで、このセドリック ターボ登場以降、日本車にターボ時代の幕が開いたという面もある。
もちろん実際にもアイドル回転の改良、トランスミッション及びファイナルギア比の変更なども合わせて、 10モード燃費で8.6km/L、60km/h定地走行燃費が16.0km/Lと良好なものとなっている。
環境性能に関しても、ターボを装着して圧縮比を下げたためにNOx、HCを低減することができた。また、モノリス型三元触媒、空燃比フィードバック制御システムなどの採用により、排出ガス清浄化を図っている。
ターボSでは4輪ディスクブレーキ、アルミロードホイール、、ガス入りツインチューブショックアブソーバー、強化型フロントスタビライザー、スチールラジアルタイヤ(ミシュラン製)、ブラックフェイスメーターなどを装備してよりスポーティなイメージとした。
とかくターボエンジンというと純粋なスポーツモデルを想像しがちなのも当然だが、まず高級車と位置づけられるセドリックからそれを導入した日産の狙いは、豪華で重厚なイメージだけが先行するセドリックにスポーツイメージを持たせることにあったようだ。
実際、セドリック ターボの走りは相当に余裕のあるもので、本格的な高速セダンモデルの登場として、ユーザーからも高い評価が得られた。そして、これから数年の間はトヨタが2T-Gなどを中心としたDOHC路線を取るのに対して、日産はL20ET型を中心としたターボ路線を取ることになる。
日産セドリックHTターボS(430型)諸元
●全長×全幅×全高:4690×1690×1410mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1390kg
●エンジン型式・種類:20ET・直6SOHCターボ
●排気量:1998cc
●最高出力:145ps/5600rpm
●最大トルク:21.0kgm/3200rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:195/70HR14
●新車価格:226万3000円