3代目6シリーズは、カブリオレのほうがクーぺより先に登場した。2010年9月のパリオートサロンで「コンセプト 6シリースクーぺ」が公開され、2011年1月のデトロイトモーターショーで「6シリーズ カブリオレ」、そして3月のジュネーブオートサロンで「6シリーズ クーぺ」が発表された。それだけカブリオレは重要なモデルだった。今回は発表間もなく、南アフリカ・ケープタウンで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年3月号より)

パーソナルで豪華、そしてスポーティな演出

画像: トップはキャンバス製で、19秒で開き、24秒で閉じる。40km/hまでなら走行中でも開閉操作が可能。

トップはキャンバス製で、19秒で開き、24秒で閉じる。40km/hまでなら走行中でも開閉操作が可能。

厳寒のドイツを抜け出して、夏真っ盛りの南アフリカ・ケープタウンに到着した。外気温25度の世界で私を待っていたのは、そんなBMW 6シリーズのカブリオレである。

全長4.89m、全幅1.89m、全高1.37m、ホイールベース2.86mの堂々たる4シーターオープンモデルは、長く、幅広く、完璧なプロポーションを持っている。

デザインはエイドリアン・ファン・ホーイドンク率いるBMWグループの手でまとめられたものだが、最初のスケッチはナデール・ファーギザデーというベルギー出身のスタッフデザイナーの手によるものである。プレスカンファレンスに同席した彼は「ボディのサーフェスはその下に大きなエネルギーが漲った水面をイメージして描いた」と言う。

BMWのデザインは、アウディのスカッとしたものと比べると、非常に有機的で理解するのにちょっと時間がかかる。もちろん様々な意見はあるが、それだけエモーショナルであると言えなくはない。

私がこれからテストする650iカブリオレのボンネットの下には、4395ccの排気量を持ったV8エンジンが搭載されており、ツインパワーターボを介した最高出力は407ps、最大トルクは600Nmを発生する。

BMWの発表によれば、スタートから100km /hまでの到達時間は5秒ちょうど、そのまま加速すると1km地点を23.8秒で通過する。そして250km/hでリミッターが働くことになる。

インテリアにはドライバーを囲むようなデザインが与えられており、パーソナルで豪華、そしてスポーティな演出に酔ってしまいそうだ。

快適なクルージングも敏捷な動きも味わえる

早速、スターターボタンにタッチして、4.4LのV8エンジンを目覚めさせる。標準装備のZF製8速オートマチックはスムーズこの上ない高級感のあるトランスミッションだ。高出力のエンジンと組み合わされると、これにピックアップの鋭さが加わってシャープな感じが伝わってくる。

画像: インテリアも一新され、レザーやウッド、アルミで仕上げられた空間は高級感にあふれている。

インテリアも一新され、レザーやウッド、アルミで仕上げられた空間は高級感にあふれている。

ケープタウンの混雑した市街地を抜け撮影場所の海岸へ向かう。サッカーのワールドカップがもたらした経済効果なのかはわからないが、完成直後と思われる道路はよく整備されており、路面はまったくスムーズである。そのおかげで6シリーズカブリオレはミシリとも言わずクルーザーのように流れて行く。

開発主査のDr.オッホマンによれば、ボンネットとドア、そしてサスペンションの主要部はアルミ製、加えて前後のフェンダーとトランク上部とトノカバーはプラスチック製として大幅な軽量化を行い、歩行者保護などの法規対策による重量増加分を埋め合わせているという。しかも構造部分にはハイテンションスチールを多用した結果、重量の増加を伴うことなく、ボディ剛性はおよそ50%も強化されている。

やがて、交通量の少ない、素晴らしい景観の海岸に到着する。さすがにこの付近の道路は完全には整備はされておらず、凸凹のある路面はカメラマンがブレを心配するほどだった。しかし全長4.89mの巨艦は、大きなボディの揺れや建付けの悪さなどは微塵も見せず、スムーズに撮影を終了することができた。

その後、海岸線のタイトなコーナーが続くワインディングを楽しんだが、ここで6シリーズカブリオレはまるで性格が変わったような、敏捷な動きを見せてくれた。

それを可能にしてくれたのは、正確でシャープ、そしてフィードバックのしっかりしたEPS(エレクトリックパワーステアリング)とオプション装備のインテグラルアクティブステアリング、アンチロールシステムなどの電子アシストシステムであった。さらに前後のベンチレーテッドディスクは過酷なハードブレーキの連続にも少しも音をあげなかった。

ケープタウンの穏やかで暖かな気候では必要としなかったが、6シリーズカブリオレのトップはこれまでどおりキャンバス製で、内部にポリウレタンが組み込まれた遮音性/耐熱性に優れたものとなっていた。もちろん電動で、開くのに19秒、閉じるのに24秒しかからない。しかも40km/hまでなら走行中でも開閉操作が可能だ。

このニュー6シリーズカブリオレの日本への導入発表は、シーズンに間に合うよう3月下旬に決定したようだ。価格はまだ決まっていないが、先代のカブリオレより若干高くなるに違いない。

日本で乗るにあたって少々気になるのは、駐車に注意を払う必要が生じるかもしれないこと。もっとも1000万円を軽く超えるであろう高額なこのクルマを買える人には、問題ないのだろうが。(文:木村好宏)

BMW 650i カブリオレ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4894×1894×1365mm 
●ホイールベース:2855mm 
●車両重量:1940kg 
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4395cc
●最高出力:300kW(407ps)/5500-6400rpm
●最大トルク:600Nm/1750-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●最高速:250km/h (リミッター)
●0→100km/h加速:5.0秒
※EU準拠

This article is a sponsored article by
''.